研究課題/領域番号 |
16K19678
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研究機関 | 公益財団法人田附興風会 |
研究代表者 |
阿部 純也 公益財団法人田附興風会, 医学研究所 第6研究部, 研究員 (40728028)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | AGS / Interferonopathy / 遺伝子検査 / IFIH1 / エクソーム |
研究実績の概要 |
Aicardi-Goutieres症候群(AGS)、Familial Chilblain Lupus(FCL)の確定診断と新規患者集積のため、遺伝子検査を継続した。またこれらの疾患はⅠ型インターフェロン関連疾患(Interferonopathy)と考えられているが、近年単一遺伝子異常による同関連疾患の報告が増えているため、我々も対象疾患を増やし、遺伝子検査をパネルとして次世代シーケンサーによって施行している。現状は、AGS1-7(TREX1、RNASEH2B、RNASEH2C、RNASEH2A、SAMHD1、ADAR、IFIH1)、SPENCDI(ACP5)、SAVI(TMEM173)の他、ISG15、DDX5B、POLA1、USP18の13遺伝子である。 今年度、新規患者6人に対して遺伝子検査を施行した。対象としては成人領域にも疾患そのものや我々の取り組みが認知されてきている影響か、内科や皮膚科からの依頼が増加した。その結果、現在までに判明している分までで、IFIH1遺伝子変異の患者(AGS7)を1名同定した。また結果解釈の難しいTREX1変異、RNASEH2B変異を各1名ずつ同定し、両親の遺伝子検査を追加検討している。 以上より、本邦における遺伝子変異の確定したAGS患者はAGS1(TREX1)6名、AGS2(RNASEH2B)1名、AGS4(RNASEH2A)1名、AGS5(SAMHD1)4名、AGS7(IFIH1)5名の計17名となった。なお今年度は、AGS以外の遺伝子異常は同定されなかった。 また遺伝子検査で異常が同定されない患者に対して適宜エクソーム検査を追加しているが、今年度、CTC1遺伝子異常という頭蓋内石灰化を伴う疾患と判明した患者を同定した。 レコンビナントTREX1ヘテロダイマーを用いた機能解析系の確立は、鋭意検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
AGSを含めた臨床的な相談・対応が引きつづき多く、また検査遺伝子を13種類まで拡大させた事、対象疾患の稀少性のため遺伝子変異を認めた場合の確認(意味のある変異かどうか)に時間がかかっている。現状では両親や同胞の検査を適宜追加したり、機能解析を行ったりして対応しているが、今後データの集積が進めば検討に要する時間も短縮できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
AGSを含めたInterferonopathyに関する遺伝子解析を行っているのは我々だけであり、引きつづき疑い患者症例に関しての相談や遺伝子検査を積極的に行っていく。本邦における全患者を把握しているので、その臨床症状を含めて情報を発信していく責務があると考えている。 また本邦に多いTREX1ヘテロ遺伝子症例に関して、レコンビナントTREX1ヘテロダイマーを用いた機能解析系の確立に向けて、検討を続けていく。その上で低温培養下等での検討を重ねて、AGSでよく見られる凍瘡様皮疹の病態解析を進めていく予定である。 これらの研究は稀少疾患の検討であるばかりではなく、同じインターフェロン関連疾患とされるSLEやシェーグレン症候群等、より患者数の多い疾患への応用が期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度への繰り越し理由としては、予定していた海外での国際学会に参加しなかった。遺伝子検査の継続に関しては、もともと研究室に残っている物品・試薬である程度は賄えた事も影響したと考えられた。 使用計画としては、学会への参加と、増加している遺伝子検査に対する物品・試薬に充填する予定である。またその他研究計画に沿って、研究を進めていく予定である。
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