研究実績の概要 |
様々な神経変性疾患においては、脳組織内の過剰な鉄沈着が病理学的に報告されているが、定量的磁化率マップQuantitative Susceptibility Mapping (QSM)は脳実質内の鉄含有の定量評価に優れていることが知られており、これを用いた変性疾患における画像的研究が進んでいる。パーキンソン病における黒質の鉄含有について、臨床症状とあわせ詳細な評価を行い、QSMはパーキンソン病の診断に優れていることは自身で発表した(Minako M, et al.Lateral Asymmetry and Spatial Difference of Iron Deposition in the Substantia Nigra of Patients with Parkinson Disease Measured with Quantitative Susceptibility Mapping。AJNR.2016; 37(5)782-788)。この研究では、パーキンソン病と健常者との差を示すことはできたが、次のステップとして、パーキンソン症状を来す疾患である進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症といったパーキンソン症候群を対象に、深部灰白質(黒質、赤核、被殻、尾状核頭部、淡蒼球)の磁化率を評価し、その傾向の違いから鑑別が可能であるかを調べることにした。健常者のデータも採取し、同時に比較した。その結果、進行性核上性麻痺は淡蒼球の磁化率値が有意に高値を示し、診断に有用であることが判明した。過去の組織学的報告と一致するものであり、QSMの進行性核上性麻痺における診断の有用性を示唆する結果となった。そのほかの疾患については診断に有用となる傾向は認めなかった。理由としては、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症の患者数がパーキンソン病と比較し少なく、傾向を見るのが困難であったことが挙げられる。
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