研究実績の概要 |
本研究は、成人神経膠腫において、遺伝子変異・病理所見・放射線画像特性がどのように相関し、どのように腫瘍の不均一性と関わっているかを明らかにしていくことを目的としている。本年度では、前年度に引き続き、成人神経膠腫症例の腫瘍サンプル・放射線画像を収集し、膠芽腫(WHO grade IV)において250例、低悪性度神経膠腫(WHO grade II-III)において200例の解析を行った。遺伝子解析はこれまでに解析していたIDH1/2, TERTプロモーター、MGMTメチル化に加え、EGFR, CDKN2A, CDK4, MDM2, PTEN, NFKBIA等の神経膠腫において特徴的かつ、診断や予後マーカーとして重要なコピー数異常についても解析した。これらの遺伝子・放射線画像・病理所見の対比を行った。また、リファレンスデータとして米国TCGAの550例の遺伝子データを用いた。低悪性度神経膠腫(WHO grade II-III)においては、網羅的放射線画像解析(radiogenomics)で抽出された放射線画像特性と遺伝子状態との対比を行い、統計学的に脳腫瘍の放射線画像特性(MRIにおける形状や信号強度など)と遺伝子状態のパターンに相関があることを明らかにした。また、特定の遺伝子が病理所見における形態学的特性と関与していることが示唆される所見を得た。一方、膠芽腫(WHO grade IV)においては、ある特定の遺伝子変異の組み合わせに着目し、それらの有無による放射線画像の特性や臨床経過との関係を解析することができた。さらに、TCGAのリファレンスデータとの対比を行うことで、それらの所見の検証や、コホート間の不均一性と本疾患における病理所見の意義についても明らかにすることができた。
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