研究開始当初の背景:網膜静脈閉塞症には網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分枝閉塞症がある. どちらも網膜静脈の閉塞により生じる網膜出血、軟性白斑や続発する黄斑浮腫を生じる. 特に黄斑浮腫は日常生活に重要な視力の予後に重要であるため、以前から様々な治療法が試みられてきた. 現在、黄斑浮腫に対して一般的な治療法である抗血管内皮増殖因子 (VEGF)治療は、高い視力改善効果がある一方で、複数回の注射が必要になる症例や、高額な医療費などの問題点もある. そのため硝子体手術が治療法の一つとして見直されつつある. 研究の目的:網膜静脈閉塞症後の黄斑浮腫に対する硝子体手術の有効性を検討する. 研究の方法:光干渉断層計 (OCT)で得られた網膜血管、脈絡膜のデータ、患者硝子体液で得られたサイトカイン /ケモカイン濃度のデータと病態との関連を検討する. OCTによる脈絡膜の撮影や、造影剤を使用しない血管撮影も評価する. 手術時に採取した硝子体液はELISAやCytometric Bead Arrayを用いて、VEGFとそれ以外のサイトカイン /ケモカイン濃度を測定する. 研究成果:平成28年4月から平成30年3月までに当科で硝子体手術を受けた患者6例6眼について検討を行った. 患者の平均年齢は68.3±11.5歳、術前の矯正視力の中央値は0.5、術後3ヶ月目の矯正視力の中央値は0.7であった. 硝子体手術の契機は3眼が黄斑前膜の悪化、3眼は硝子体出血であった. 1眼は抗VEGF治療を4回行った既往がある. 中心窩網膜厚の中央値は術前191μmであり、術後3ヶ月目は233μmであった. 6例中5眼では3ヶ月目までに術後の浮腫の改善は認めなかった. 今後対象症例数を増やし、長期的な視力を評価するとともに、硝子体液の液性因子濃度、OCTとの関連を検討する予定である.
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