研究課題
小腸移植は他臓器移植と比べ拒絶反応の管理がより大きな問題とされている。小腸移植における自然免疫(補体、マクロファージ:Mφ )の関与を解明し治療成績の向上を目標とした。ラット小腸移植モデルを用い、移植における補体、Mφの変化を計測し、抗補体薬、抗Mφ薬投与によるグラフト生着延長効果の検討を目指した。昨年度に続き、Mφの機能に関与するPAK2 inhibitor/PQA-18による抑制効果をin vitroでの反応を含め検討した。まずIn vitroでは、ラットとは別にヒト末梢血単核球(Mo)をGM-CSFでMφに分化させ、そのPEC細胞(異種)に対する反応をPQA-18投与下で検討した。PQA-18はPEC細胞に対するMφの細胞傷害反応を有意に抑制したのに加え、混合リンパ球反応(MLR)にてT細胞の反応も抑制する事を証明した。一方、同種ラット小腸移植モデルではPQA-18投与群(術後2週間4mg/kg/day・腹腔内投与)/非投与群に分け、免疫抑制効果を検討した。拒絶を起こす移植後6日の時点で検体(腸間膜リンパ節、血液など)を採取した。移植前単核球数は投与群/非投与群で差を認めないものの、移植後6日目では非投与群1.05±0.24(×10^3/μl)、投与群0.34±0.12(×10^3/μl)と投与群での有意な低下を認めた(p=0.01)。また、移植後6日目にレシピエント腸間膜リンパ節(MLN)からT細胞を分離し、MLRをWST-8検定で評価したところ、投与群では有意に増殖率の低下を認めた。さらにMLR時にPQA-18を共培養したところ、非投与群においてもPQA-18共培養下では増殖率が有意に低下した(p=0.03)。このことからPQA-18のMφの抑制効果に加え、T細胞の増殖を直接抑制する可能性も考えられた。
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Transplant Proc
巻: - ページ: -
Immunobiology
巻: 224 ページ: 575~584
10.1016/j.imbio.2019.04.003