重症病態では血管透過性が亢進する。血管透過性の亢進は臓器浮腫を惹起し、その機能障害を引き起こし、予後の悪化にもつながる。そのため、その亢進を制御することは重症患者の救命のために重要であり、その探索研究のためには動物実験が有用な手段となる。しかし、従来の動物実験における血管透過性の評価では摘出した臓器を用いる必要があったため、動物を犠死させる必要があり、血管透過性の重症度と生命予後とを同一個体で評価することが不可能であった。その問題点を解決するため、蛍光イメージング測定システムを用いた、蛍光度評価による非侵襲的血管透過性評価方法の開発を行った。その結果、足底の蛍光度は、全身性炎症反応で障害される肺の蛍光度と非常に良く相関することが明らかとなり、さらには、各個体における蛍光度の強弱は、従来から血管透過性の指標として用いられてきたEvans blue色素の血管外漏出量と同様の傾向を示すことも明らかとなった。よって、足底の蛍光度評価は、肺の蛍光度、すなわち、肺の血管透過性の非侵襲的評価に有用と考えられ、それを英文論文として報告した。この新規評価方法は、今後の血管透過性に関する病態解析ならびに治療学研究を大いに推進させうるものと考えられる。また、その新規評価方法を用いて、血管透過性亢進を制御する可能性が示唆されているが、その効果が明らかではない複数の薬剤についての検証を行った。その結果、盲腸結紮穿孔手術による敗血症モデルマウスにおいて、手術前にエリスロポエチンを投与した場合に血管透過性の亢進を抑制しうる可能性が示唆された。しかし、手術後投与時の薬効や、生命予後の改善効果については明らかではなかった。これら、血管透過性亢進を抑制する薬剤についての探索研究については、引き続き検討を続ける予定である。
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