研究課題/領域番号 |
16K20569
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
酒井 陽 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (80772425)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 歯原生上皮幹細胞 / 転写因子 / 細胞分化 |
研究実績の概要 |
ヒトの体には不完全ながら修復・再生能力が備わっている。皮膚損傷や骨折などでは、自らの治癒能力を駆使して組織修復を行う。しかしながら失った組織や臓器で修復・再生されることはほとんどない。歯科領域では、ヒトの歯のエナメル質は修復・再生不可能な組織である。我々はエナメル芽細胞分化に必須の因子である、転写因子Epiprofin(Epfn)と複合体を作るT-Box1 (Tbx1)を同定した。Epfn-Tbx1複合体は歯原性上皮細胞分化の過程でエナメル芽細胞分化に関与し、歯の上皮細胞の運命決定に関わっている可能性が考えられる。そこで本研究では、われわれが株化したSox2陽性歯原性上皮細胞(CLDE細胞) とマウスモデルを用いた実験から、EpfnとTbx1の制御因子が歯原性上皮細胞のエナメル芽細胞への誘導、分化を制御していることがわかった。Tbx1はSox2発現を誘導し歯原性上皮細胞の維持に必要であると考えられる一方で、Epfnは発現量によってエナメル芽細胞への誘導、殖、分化の異なる機能をする多機能因子であることがわかった。低発現レベルのEpfnはEpfn/Tbx1複合体を形成することによりTbx1のSox2誘導転写機能を阻害して、Epfnが歯原性上皮細胞のエナメル芽細胞への誘導を促進させる。また低発現レベルのEpfnはTbx1のプロモータに結合してTbx1の発現を誘導する。さらに低発現レベルのEpfnはCLDE細胞の増殖を促進させるが、高発現レベルのEpfnはCLDE細胞のエナメル芽細胞への分化を促進する。これらの研究結果からエナメル芽細胞の新たな分化誘導法を導くことができた。転写因子Epiprofin(Epfn)と複合体を作るT-Box1 (Tbx1)の幹細胞維持、分化に関わるメカニズムが解明された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在,論文に必要と思われる結果は全て出揃い,論文作成中で今年度中に論文のacceptを目指せるため.
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今後の研究の推進方策 |
現在,論文に必要と思われる結果は全て出揃い,論文作成中で今年度中に論文のacceptを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
外部発注する予定のマイクロアレイが年度内に施行できず,29年度の研究費に未使用額が生じたが,次年度に施行されるため,今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。最終年度は論文投稿や追加実験,また学会発表もする予定となっている.
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