研究課題/領域番号 |
16K20701
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
小野 幸絵 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (60409240)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フレイル / NIRS / 赤外線サーモグラフィー / 口腔機能 / 介護予防 |
研究実績の概要 |
加齢性筋肉減少症(サルコペニア:Sarcopenia)は、近年その予防に注目が集まり、筋委縮発現機序の解明が進められている。本研究では、リハビリや予防、進行抑制に寄与する支援ロボットの将来的開発を想定し、レジスタンストレーニングに必要なモニタリングに必要な指標やセンサー等の要件を検討している。 本年度は、先行研究時に構築した冷却負荷法赤外線サーモグラフィー熱画像から頬部の温度上昇中心を捕捉し、深部の血流動態を携帯型近赤外分光分析法(NIRS)で把握する測定システムから得たデータが、実際に筋廃用的変化(モーターユニット、筋繊維およびサイズ減少、Oxidative代謝タイプ)を反映したものなのか、システム論的文献検証を含め実施した。 申請者は、予防手段としてADLの低下者では難しい有酸素運動から、筋マッサージによる血流改善にシフトする事を提案している。特に筋収縮スピードが遅いミオシン重鎖Ⅰ型筋繊維、早いⅡa型筋繊維に対する効果を期待している。最終的な筋レベルでのミトコンドリア生合成や脂肪酸化の向上は把握困難としても、毛細血管の血流はNIRSで把握できる点を重視し、本年度からは従来の測定点に加え、周囲部の毛細血管の血流量の改善把握を測定系に追加した。他律的な筋運動によってもサテライト細胞の活性化・増加は期待できると考えられた。 本年度に実施した冷却負荷法赤外線サーモグラフィー熱画像の測定結果から、咬筋相当部の温度変化中心から温度変化辺縁までの平均距離は3~4cmとなっており、今後はピエゾ端子などを活用し可動状況等からセンサの装着範囲について検証を実施したい。 また、NIRSから得たデータ解析から、1Hzのマッサージ環境下での血流の振幅はほぼ一定しており、次年度に向けて平均応答法(averaged response method)等を活用し、代表数値化する手法について検討したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請で使用している携帯型近赤外分光分析法(NIRS)のシステムドライバは、開発業者に依頼し研究用に4チャンネルにカスタマイズしたものを使用している。このシステムドライバを搭載したPCのSSDに不具合が発生し、その修復と原因究明、修正ドライバの供用を受けるまでに約5か月を要した。このため測定が遅延したため(修復期間は既存データの解析と文献的検証を主体に研究を遂行した)。また、新規に活用を開始した3Dプリンター(AFINIA3D)の慣熟にも時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
将来的な咀嚼支援ロボットや唾液腺マッサージロボットなどには、空気圧アクチュータの活用が必要不可欠と推測するが、空気圧システムの欠点である低剛性、応答遅れ、温度変化変動性など実用化までの課題は多いと考えられる。 申請者は、口腔周囲の筋肉のうち最も咀嚼に関連する咬筋に対象を絞り、サルコぺニアの前兆的変化等を把握可能な、予知性の高い指標が必要と考えている。これは短期的には介護予防の観点から、筋肉の廃用変化等への対策に寄与すると思われる。また、咀嚼運動を中心とした顎口腔機能支援の定量的かつ直接的評価を可能とするためにも、近赤外分光法(NIRS)による賦活指標を開発することで、ロボット化の要件を検証することも可能になると考えられる。これらの点を中心に、咬筋部の深部血流動態の変化を引き続き捕捉し、マッサージや機能訓練の効果確認等が可能かを検証し、それら過程から支援ロボット開発等に発展性のある賦活指標の開発に向けた基礎資料の収集を実施したい。 また、得られた基礎資料については、解析が終了したものから日本口腔衛生学会等の関連学会に報告したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用していた携帯型近赤外分光分析法(NIRS)のシステムドライバを搭載した専用PCのSSDに不具合が発生し、その修復と原因究明、修正ドライバの供用を受けるまでに約5か月を要した。このため同期間の測定が不可能となり遅延期間が生じた(修復期間は既存データの解析と文献的検証を主体に研究を遂行した)。 また、新規に測定センサー部の遮光用治具の製作用に3Dプリンター(AFINIA3D)を導入したが、この使用の慣熟にも時間を要し、代用の治具の提供を開発業者から得るまでに時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
携帯型近赤外分光分析法(NIRS)のシステムドライバの改修を実施し、ドライバ用PCを安定性の高い機材に変更した。研究期間も限られていることから、測定は代用治具を活用し実施を急ぎ、予定の対象数を次年度中に確保する予定である。 また、追加課題としてピエゾ端子を活用し可動状況等からセンサーの装着範囲についても検証を実施する予定であり、これら端子の更新も次年度送りとなったため並行して実施する予定である。
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