これまでの研究成果を基礎資料とし、咀嚼支援型ロボット機能でも最重要課題となると予測された、閉口運動を想定したウェアラブル型ロボット機材のインターフェイス部の親和性および機能性の検証を実施した。 当初、想定した3Dスキャンと3Dプリンタでオトガイ部を再現し、機能力の伝達性を検証しようとしたが、閉口路を再現する外部支援型のシステムの構築は現段階では困難との結論に達し、対合関係の維持に限定した測定系を、研究最終年度に再構築した。このシステムはTスキャン感圧システムを転用したもので、矯正治療用サンキンリトラクターと栄養投与用EDバッグ(COVIDIEN社製)、200mlディスポ―ザブルシリンジ(テルモ社製)にて構成した加圧接触型のウェアラブル機材である。 報告者が想定した支援ロボットと人体とのインタラクションモデルのアルゴリズムでは、人体の活動を妨げないで支援するロボットを想定していた。しかし、研究の遂行とともに、人体側、ロボット側相互に圧センサー系と力学系を備え、それが調和して動作しない限り、人体の筋骨格系の運動、特に顎運動支援を想定したロボットの考案は不可能であるとの結論に達した。 また、運動の精密性を重視していた点についても、日常的な咀嚼に伴う顎運動では精密性よりも食品テクスチャーに応じた汎用性が重要との結論に達し、大幅なロボットモデルの改変を実施する事とし、再現の困難な水平的な運動への対応は将来的な課題とし、垂直方向への運動支援に限定してモデルを構築する事とした。 本システムで、中心咬合位から咬頭嵌合位までの咬合を支援する事を想定して成人被検者5名に対してTスキャンにて測定を実施した結果、咬頭嵌合位での咬合面圧は自力咬合時の約30.0%の値が得られ、この結果から一定の閉口機能の支持が実現できる可能性が示された。
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