研究課題/領域番号 |
16K20883
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小林 由美 北海道大学, 農学研究院, 研究員 (30634737)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 漁業被害 / 希少種 / 人間との軋轢 / 個体数推定 / 個体識別 / 北海道 / ゼニガタアザラシ |
研究実績の概要 |
北海道東部沿岸に生息するゼニガタアザラシの個体数推定のために,小型無線機ドローンを用いて個体数のカウントを行った.近年,本種の生息数が増加し,遠方の岩礁にも上陸するようになったために,従来の陸地からの双眼鏡や望遠鏡を用いたカウントでは,見落としする個体が生じるようになったためである.ドローンを用いたカウント調査は,日本におけるゼニガタアザラシ上陸場として大きな襟裳岬地域,ならびに大黒島で行った. その結果,陸地からの調査地点から約1.5㎞先の遠方にドローンは10分以内に到達し,上陸場に上陸するアザラシの全体像について,短時間(おおよそ20分以内)で映像取得ができる方法が確立された.従来の目視調査では,上陸場全体を網羅したカウントを行うのに,30分以上かかることもあり,その間に上陸-降海する個体をカウントできないという問題点を解決することができた.また,ドローンは,上陸場からの高さ約100mでアザラシに接近し,ゆっくり旋回・接近をすることで,アザラシにディスターブを生じることなく,近距離(50m以内)からの映像を取得することができる目途がたった.これらにより,従来の目視調査では,30%程度個体の見落としが生じている可能性が示唆された.特に,その年生まれの赤ちゃんは,見落とし率が高いことが推定された. これまで蓄積されてきた大黒島における目視調査結果,および個体識別データを整理した.その結果,過去に厚岸湾内で捕獲された個体が大黒島を上陸場として活用していたことが明らかになった.成獣のゼニガタアザラシ(2個体)が,大黒島と厚岸湾内を日常的に行き来し,小定置網周辺に出現して漁業被害を引き起こしていたことが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初,ドローンを用いた調査は,5-6月の出産・育子期と7-8月の換毛期に実施する予定であったが,8月は北海道に大型台風が相次いで接近し,野外調査を実施することができなかったことによる.
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今後の研究の推進方策 |
ゼニガタアザラシ個体数調査:5-6月の出産育子期及び7-8月の換毛期に参加する.調査地,大黒島において小型無線機ドローンを用いて上陸場全体の写真撮影を行い,個体識別ができうる写真データの集積を試みる.1970年代から2000年代はじめまで蓄積されている写真データを照合し,WEB上の個体識別データベースに登録して個体ごとの情報をまとめる.アザラシ類に限らず種々の大型野生動物の個体数推定と変動に関連する先行研究をリストアップし,フィールド調査法とデータ解析法の両面から検討する. 算出したパラメータと海洋環境の変化について解析する.
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次年度使用額が生じた理由 |
調査を予定していた8月に大型台風が相次いで接近し,野外調査を実施できなかったことによる.
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次年度使用額の使用計画 |
ゼニガタアザラシ個体数調査:5-6月の出産育子期及び7-8月の換毛期に参加する.調査地,大黒島において小型無線機ドローンを用いて上陸場全体の写真撮影を行い,個体識別ができうる写真データの集積を試みる.
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