研究課題/領域番号 |
16K20937
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上浦 佑太 筑波大学, 芸術系, 助教 (50633187)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 立体 / アイデア / 発想 / かたち |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、本年度も作品資料の収集に注力した。昨年度はアート、デザイン問わず過去に出版された各種造形分野の作品事例を掲載した図版資料の収集を中心としていたが、本年度は引き続き図版資料の収集も行いつつ、あわせて立体表現の最新事例に直に接して撮影記録することで、時代性を反映した充実したサンプルの収集を意識した。本年度はヨーロッパ各地で数年おきに開催される代表的な現代芸術祭が同時期に開催される貴重なタイミングであったため、これらを視察することで多様なかたちのサンプルを効率的に収集することができた。主にドイツのドクメンタとミュンスター彫刻プロジェクト、イタリアのベネチアビエンナーレを視察し、屋内外の彫刻作品やインスタレーション、壁面から突起した半立体作品(レリーフ)など多彩な立体表現事例の記録を得ることができた。芸術祭だけでなく、その周辺に位置する各地の中心的な美術館や彫刻公園、パブリックアート、建築等も対象とし、現地で様々な角度から撮影記録・資料収集を行った。各作品の基本情報として作家名、タイトル、素材、撮影地、撮影日を記録するとともに、分類に必要な構造的特徴を付記して表計算ソフトで一元的に管理している。昨年度の文献調査により収集したデータも同様に管理しており、これらを合わせることでかたちの見本帳作成に必要な資料数をほぼ確保することができた。また、これらのデータをもとに分類の視点として扱う構造的なテーマの候補についても絞り込むことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
かたちの見本帳に掲載するかたちの候補を選出するための作品資料は、本年度までで概ね出揃った。今後はこれら個々の作品データを視覚的に抽象化し、作品の魅力を支える構造の特徴を強調したモデルを作成する段階に入る。本来の計画では、本年度の段階で最終的に見本帳に掲載する際のモデルの見え方をある程度具体化し、それらを並べながら比較して見本帳としての使い勝手を検討する段階に入りたかったが、資料収集とデータ管理にかかる負担が予想以上に大きく、これらの活用方法に関する具体的な検討までたどり着くことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
収集した資料のモデル化と構造的特徴に着目した分類項目の追加を行う。多様な分野の作品があるため、発想を喚起するツールとしての有用性を意識して、形のバリエーションとバランスを考慮しつつ作品の選定を行う。また、見本帳としての具体的な使い方を想定し、モデル化した立体の掲載方法について再度検討する。当初は個々のモデルをwebブラウザ上で360度から確認できる仕様を計画していたが、拡散的に発想を喚起するツールを目指す場合、個々のモデルの詳細を凝視させるよりも、一度に多様な形のバリエーションに接することに重きを置いた方が有効な可能性がある。また3Dはデータ量も大きく、webブラウザで速やかに再生できる環境を確保するのは簡単ではない。各モデルの特徴的形態を瞬時に把握できる角度からの見え方に限定し、等角図を描いてたくさん並べる形式にした方が、よりアイデアソースとして効率的に機能するだろう。今後は、この等角図による表現も視野に入れつつ進めていくことにする。
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