研究課題/領域番号 |
16K20946
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
朱 藝 筑波大学, 人文社会系, 助教 (30737664)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 国民文化 / 異文化経営 / 中国系企業 / 人的資源管理 |
研究実績の概要 |
本研究は、国民文化が如何に1.異文化経営に影響を与え、2.現地文化と相互作用しているのかについて考察することを目的としている。ここでの国民文化とは、「原産国(country-of-origin)」文化と規定し、特にそのイメージに焦点を当てる。調査対象は、日本で事業を展開する中国系の旅行会社、飲食店である。これまでの研究で明らかになったことは、以下の点である:
(1)在日中国系企業の多様化:まず、3部類ある(華僑による事業、中国から来日し起業、中国企業の日本法人)。次に、企業形態によって制度等が異なる。最後に、日本人の多くが転職組で、中国人は新卒が多い。(2)異文化経営への影響(人的資源管理)としては、企業幹部が中国人と日本人に対して態度を変えていることが多い事が分かった。また、営業職は、日本人をメインに活用している。最後に、日本人はトップになるのが難しいということも判明した。(3)現地文化との相互作用の面で、多くの日本人従業員が企業外部(日本社会)からの「偏見」を感じているということが分かった。その一方で、企業内部では、日本人側が中国人の「慣習」に適応しようとしている現象も多々見られた。つまり、企業内部と外部では異なる作用が発生していることが分かった。
現段階での考察としては、まず、「原産国」イメージは、消費購買行動だけではなく、従業員の考えや行動に影響するが、とある企業に入社後、その企業風土にも大いに影響を受けることがある。次に、これまで研究を行った企業に限定すると、日系企業がある程度一貫した企業慣習を持つことに比べ、より多様化していると考える。その背景には、中国の社会文化的な背景だけではなく、企業の形態、経営者の素質など多くの要因が想定される。今後とも、「原産国」文化を定義するには、各企業の特徴、その企業がどのように現地の文化と相互作用しているのか、包括的に考察する必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目の研究では、主に以下の作業を行った:
1.現地調査:日本の2都市において、中国系企業で働いている人たちにインタビューを行った。そのデータを整理し、まとめた。 2.学会発表:2016年は、国内・国外両方の学会で発表することができた。どちらの学会においても、研究者から有意義な意見を頂くことができた。 3.出版:出版は、主に学術誌への英文論文を投稿し、発表した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては、以下の通り行っていく: 1.異文化経営への影響に関するデータをより多く収集し、分析する (1)現段階では、ある程度人的資源管理に関するデータを入手しているが、その多くは、なぜそのような現象がみられるのか、その背景が明らかではないことが多い。そのため、データの表面ではなく、内部にどのような構造があるのか、深く考察していくことが必要である。(2)異文化経営の中で、ブランディングについても研究を行う予定だったが、これまでの調査ではあまり明らかになってきていない。多くが中小企業で、予算や戦略上そのような必要性がないと考えていることが多い。今後は、調査範囲を広め、中国系企業の日本法人にもインタビューを行い、ブランディングの面で考察していきたい。
2.研究成果発表を継続する 1年目と同様、学会や出版を通じて、研究成果発表を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当初、現地調査で得たデータの分析や整理に、ある程度の人件費を予定していたが、効率的な運用により、その人件費を省く事が可能となった。そのため、未使用額は、次年度の使用額に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
まず、現地調査、学会での発表に旅費を使用する。その額は、現地調査や学会の場所や滞在費日によって異なることが想定される。次に、英文校正費に関しては、前年度に引き続き論文校正に使用する。最後に、人件費の額はあまり多くないと思うが、データ整理に活用していく。
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