研究課題
【摘出脈管内腔へのナノ粒子の灌流システム・動態イメージング解析システムの確立】リンパ管の自発性収縮に伴う径変動や振幅・頻度を経時的に追尾し計測するとともに、内腔に流れるナノ粒子を可視化し動態を解析する摘出リンパ管灌流システムと実験系を構築した。リンパ管径の計測はモニター上のリンパ管の壁のコントラストを感知しアナログ信号により行い長時間PCで観測できるシステムを作製した。灌流ナノ粒子のイメージングには、高感度高FRハイスピードカメラを顕微鏡に設置し管腔を流れるナノオーダーの粒子が観測できるシステムを構築した。【ナノ粒子灌流時の脈管生体反応の解析】【粒子灌流後の脈管細胞レベルでの影響の解析】①カーボン粒子のリンパ管内移動に関するイメージングおよびその評価:粒子状CNHを用いてCNH分散状態のサイズ・電荷・構造等の評価を行い、溶液種・超音波出力・濃度等の好分散条件を決定できた。リンパ管内を灌流させたCNHの動態は、ハイスピードカメラで撮影し種々のリンパ管構造毎の粒子の動きを可視化することに成功した。またソフトウェアを用い撮影動画の粒子を追尾し流れを解析した。②標本の生組織としての評価:摘出リンパ管が自発性収縮を維持する条件下で生理活性物質により収縮・弛緩反応を薬理学的に調べ平滑筋およびリンパ管内皮細胞の健在を確認できる方法を確立した。③リンパ管自発性収縮に与える影響:管内を灌流させたCNHやCNTが管に到達直後自発性収縮や直径、動きが変化する様々な現象を捉えた。④リンパ管内壁との相互作用の評価:灌流後のリンパ管組織切片を作製する方法を確立し、リンパ管弁やリンパ管内皮細胞へのナノ粒子接着を明らかにした。これらの上記の成果は複数の学会にて報告を行った。生体リンパ微小循環のリンパ流量定量およびイメージング法の確立に関しての研究は、成果をまとめ学会発表および論文投稿しアクセプトされた。
1: 当初の計画以上に進展している
このin vitro摘出組織系を用いた手技と実験システムの構築により、今後様々なナノ粒子・マイクロ粒子の脈管内送達イメージングが期待できると共に、バイオマテリアルが脈管系の生体反応・組織・細胞レベルにおいてどのような影響を及ぼすか解明する新規の生体内安全性評価法を予定通り確立することができた。現在種々のナノ粒子を脈管内に流し試験しているところであるが、用いる材料毎の正確な灌流分散状態がポイントであり、粒子濃度や粒子数、速度、粘度など脈管に灌流する最適条件を検討している。In vivoにおけるリンパ循環研究においてリンパ流イメージングと流量測定法が確立でき、腸間膜リンパ管・乳び・胸管を介したリンパ微小循環から大循環へのリンパ流の可視化を可能にし、そのイメージング手法と評価の成果を論文投稿およびアクセプトできた。またin vivoリンパ管カニュレーション法によりリンパ液組成成分や細胞成分の評価が可能となり、in vitro摘出リンパ管系の実験システムを用いた灌流ナノ粒子の動態を明らかにする研究に大いに役立てられる。そのため当初の計画以上に進展している。生体内でのリンパ微小循環に関する研究成果が早く出たため論文投稿に至った。また研究成果の学会発表を複数回行った。また複数同時に実験を行うための実験器材を準備し、この研究の実験を更に早く数多く進める計画を立てている。また学会主催の流体力学の研修に行きナノ粒子の動態を理解評価し動態解析ソフトウェアを活用する予定である。
今後は、この構築した摘出リンパ管灌流システムを用いて、CNTやCNHによるリンパ管自発性収縮への影響のメカニズムについて詳細な解析を行う。種々の構造のCNTやCNHナノ粒子を用いて脈管生体反応の評価を行い、分岐や合流リンパ管・リンパ節を介したリンパ管などの様々な構造さらに血管も用いるなど、カーボンナノ粒子の移動の仕方や流れ方、滞留、接着、蓄積、細胞や組織への取り込みなどの動態について詳細を明らかにしていく。流体力学ソフトウェアによる1ナノ粒子の動きの追尾と動態解析を計画している。またナノ粒子の表面修飾等によりリンパ管内皮細胞へ接着や取り込みが行われないようなナノ材料の開発を行う。ナノ粒子が生体に投与もしくは取り込まれたときのナノDDSを想定しナノ粒子が生体内でどのように移動し、通過経路の脈管の組織にどのように影響を及ぼすかを明らかにしていく。それらの成果により、ナノ粒子の生体に与える影響が明らかになり、今後のドラッグデリバリーシステムの臨床応用研究の分野に寄与できる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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