研究課題/領域番号 |
16K21423
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
澤田 悠紀 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (10773236)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 知的財産 / 建築 / 景観 / 著作権 / 意匠 / 文化政策 / 文化財 / 美術 |
研究実績の概要 |
本年度は、知的財産としての建築・都市景観を思考するにあたり核となる「建築の外観は誰のものか」という問いにつき、特に19世紀末の西欧および日本における「建築の著作物」概念の生成と発展の歴史に焦点をあて、法律・建築意匠および隣接諸分野の先行研究の調査・分析を実施した。 19世紀末の西欧において、従来、詩・音楽・絵画などに対する権利と考えられていた「作者の権利」が、建築・家具・記念碑などの制作者にもまた同様に認められるべきとされるに至った背景には、「美」はすべて一体であるとする運動の影響があったものと考えられる。建築や家具をはじめとする日用品の装飾に「美」を見出すアール・ヌーヴォー運動の発祥地であり、現在は欧州連合の首都ともいわれるブリュッセルにおいて実施した調査により得られた資料の一部をもとに、「応用美術」とも称される実用的作品群の法的取扱について検討した論文として、「応用美術の西欧史的考察:諸技術の統合あるいは『美の一体性理論』をめぐって」特許研究63号(2017年3月)を執筆した。また、このようにして自己の意匠に対する権利を獲得した建築家と、建築物の所有者、建築および都市景観の享受者(市民)の三者間において、「建築の外観」につき具体的にいかなる利益調整が行われているかについて比較法的観点から検討した論文として、中山信弘・金子敏哉編『しなやかな著作権制度に向けて:コンテンツと著作権法の役割』(信山社、2017年4月)に掲載の「建築作品の保存:所有者による通知の義務・作者による取戻の権利」を執筆した(2016年度校了)。 本年度においては、このように、知的財産としての建築・都市計画という概念の生成および発展の歴史について体系的な把握を行った。その過程において、次年度以降の研究の基礎となるべき資料をも豊富に収集することが叶い、今後の研究への足固めを行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 国内における研究について ① 都市および歴史的街並保存の実態調査、関係者との意見交換を、千葉県香取市佐原等において行った。国内における建築および景観をめぐる利益調整の困難について、各種文献には明らかにされることのない現場の実態を観察し、欧米における実態との比較に役立てることができた。②研究会参加については日程が合わず断念せざるを得なかったものの、他の参加者から最新の研究の知見を得ることができた。 (2) 海外における研究について ①欧州の中心地であるブリュッセルおよび近郊のルーヴァン・カトリック大学等において、広くヨーロッパ全域について多くの重要資料を得ることができた。得られた資料の一部をもとに「応用美術の西欧史的考察:諸技術の統合あるいは『美の一体性理論』をめぐって」特許研究63号(2017年3月)を執筆した。この際に得られた資料は、当該研究論文の範囲にとどまることなく、今後の研究において重要な基礎的資料となる。②国際著作権法学会の年次大会等において、世界各地からの研究者と意見交換をし、最新の知見を得ることができた。 以上により、国内外における調査は概ね当初の予定通りの進捗状況にあり、平成29年度以降の研究の基礎を固めるに充分であったと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度については、概ね、平成28年度における研究の推進方策と同様に進めていく考えである。平成28年度は西欧を中心とした研究が充実したため、平成29年度は北米につき重点的調査を進める予定である。また、国内における調査分析についても当初の予定通り遂行し、中間的な成果報告を行う計画である。 平成30年度以降については、当初の計画通り、2年間にわたり集められた資料の分析および報告とその批判的検討に集中する。そのため、必要な重要資料の大半は平成29年度中にすべて収集し終え、同年度末には、最終的な研究成果となるべきものの骨子を固める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた国内研究会への参加出張が、日程の都合により叶わなかったため。 また、海外の資料について、当初の想定以上にデジタル・アーカイブ化が進んでいたこと、また、海外出張により現地図書館で実際に触れる機会を得たことから、購入の必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
国内における研究会参加出張および国内外からの各種文献の購入にあてる計画である。
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