研究課題/領域番号 |
16K21486
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
根津 朝彦 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (70710044)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 共同通信 / TBS / 「偏向」攻撃 / 社会部 / 原寿雄 |
研究実績の概要 |
論文では、「1960年代という「偏向報道」攻撃の時代―「マスコミ月評」に見る言論圧力」上を執筆した。この論文では、革新側の新聞・通信社・放送局の動向を追った。1960年代前半には原子力潜水艦寄港問題を中心とするデモ報道の回避といった七社共同宣言の論理が貫かれており、ベトナム戦争の本格化で言論圧力はさらに強化されていく。そして1960年代において政財界の最大の攻撃対象は、共同通信とTBSであった。特に社会部への言論圧力は強く、1968年の倉石発言と成田プラカード事件でクライマックスを迎える。共同通信の原寿雄がペンネームで内部から編集現場の圧力を記録し続けた『デスク日記』も終焉する。大学闘争と70年安保を迎える前に、すでに権力側の報道への言論圧力が成功を収めていく過程を明らかにした。 通信社ライブラリーでは引き続き、共同通信社を中心とする資料を収集した。韓国では東亜日報にある新聞博物館のPresseumやハンギョレ新聞社を見学し、共同通信ソウル支局を含む2人の特派員に面会した。韓国の主要紙の歴史ならびに戦後ジャーナリズム史研究の中での東アジアの同時代性における位置づけと視座を深めることができた。 それから1968年の大学闘争の時代背景に連なる展示解説(国立歴史民俗博物館の企画展示「1968年」)を執筆した。その他、桑原武夫所蔵の書簡を調査・整理し、その資料紹介も執筆した。 また国立歴史民俗博物館の共同研究で「大学担当記者から見た「1968年」大学闘争―内藤国夫を中心に」を報告した。この成果を受けて、論文にまとめていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
共同通信に関連する論文を執筆したことで、ようやく共同通信社のジャーナリズム史研究とその時代像の射程が定まってきた。共同通信と1960年代を主対象にしながら、次なる研究成果の分析を準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究を進めるために、まずは「1960年代という「偏向報道」攻撃の時代」上の続編にあたる論文を執筆する。具体的には、政財界の「偏向」攻撃に加勢する保守側の新聞・通信社・放送局の動き、とりわけ共同通信に対抗心を抱く時事通信社の長谷川才次をはじめ、主要人物の人脈に注目することで、保守側のネットワークがいかなる作用を果したのかを明らかにする。次に、大学担当記者から見た1968年の大学闘争について『毎日新聞』の内藤国夫を中心に研究を進め、論文を執筆する。そして、これまでの研究成果をまとめるために著書刊行の準備に取り組んでいく。
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