本来であれば昨年までの研究計画であったが、1年延長し、本年が最終年度となった。 当初計画で予定していたフィールドワークが、業務多忙により実施できていなかったが、本年度は実施することができた。一昨年度に実施した平安京から美濃国府までの実地調査(フィールドワーク)の復路についてを実施し、平安京・美濃国府間の往復について基礎的なデータを得ることができた。具体的には、美濃国府から平安京まで、延喜主計式の諸国行程日数によると4日で移動することとなっており、その日数で歩けるかどうかを検証した。ただし、復路の実験をおこなうにあたっては、移動者がどのくらいの重さの荷物を持っていたかが問題となる。今回は延喜木工式人擔条の記載を参考として、当初は40kg強の荷重で実験を開始したが、1日半ほど歩いた時点で、この荷重で長時間歩くことは難しいと考え、荷重を20kgに減らし、後の行程を実施した。 本来であれば他にもいくつかのルートについて実験をおこない、データの妥当性やばらつきに関する検討をおこなう予定であったが、業務多忙や予算の都合により、平安京・美濃間の実験しか実施できなかったことが悔やまれる。今後も機会を見つけて追加の実験をおこない、成果の公表も不十分なため、補っていきたいと考えている。 上記の実験とは別に、延喜木工式人擔条の記載の数値を検証するため、京都市考古資料館所蔵平安時代前期の官窯系瓦の重量計測をおこなった。 なお、例年参加している地理情報システム学会での発表においては、考古学等で用いられる時間概念である「編年」において、各編年要素間の関係性の「位相」をどのように記述し、実装するかについて検討した。考古学に限らず、人文科学や自然科学でも用いられる「編年」をISO19108に準拠する形で、コンピュータで扱えるようにし、地理情報システム(GIS)などで活用できるように検討を進めている。
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