新型コロナウイルス感染拡大に伴い大きな変更を余儀なくされた本研究プロジェクトは、再再再延長の末の最終年度になり、外務省の感染症危険情報レベルが4(退避勧告)や3(渡航中止勧告)から2(不要不急の渡航は止めてください)へ変更となったことを受け、本来海外の共同研究者らと共に海外の所属機関にて実施するはずであった国際共同研究(ベルン大学・カンタベリー大学)や20年目の実時間調査(パラオ)の一部を遂行することができた。具体的には、研究代表者が初めてパラオ英語のデータを収集してからちょうど20年目に当たる2020年度に予定されていたトレンド調査を部分的ながらも実施し、これまでの2000年(データセットI)と2010年(データセットII)を組み合わせた10年間の変遷を探るトレンド研究に加え、20年間の変遷を探るための研究の足掛かりを作った。 また、これまで世界英語の分野では空白地帯として研究されてこなかったミクロネシア地域の英語変種の形成の歴史と言語的特徴を概観した「The history of English in Micronesia」「English in Micronesia」が全6巻から成る世界英語に関する百科事典『Wiley Blackwell Encyclopedia of World Englishes』(2023)に収録された。執筆の過程に得た関係専門家からの助言を参考にしつつ、次なるより精緻なミクロネシア英語間の比較研究に向けての土台を整備した。また基課題から継続して取り組んでいるパラオ日本語や同時期に形成された樺太日本語などの他のコロニアル言語に関する研究成果との比較も行い、コロニアル言語の普遍性と個別性に関して考察した。 以上のことから、海外の所属機関の滞在自体は短かったが、遠隔からも継続してきたこれまでの研究の集大成を図り、一定の成果・達成度が得られたと言える。
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