研究課題/領域番号 |
16KT0088
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊東 早苗 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80334994)
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研究分担者 |
岡田 勇 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (00650649)
東村 岳史 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (20273211)
西川 由紀子 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (70584936)
山形 英郎 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80222363)
島田 弦 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80410851)
日下 渉 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80536590)
石川 知子 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (20632392)
藤川 清史 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (60190013)
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研究期間 (年度) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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キーワード | 開発 / ODA / 開発協力 / SDGs / アジア / 南南協力 |
研究実績の概要 |
ポスト2015開発アジェンダの策定にむけた国際社会での議論の経緯を調べ、「国際開発」、「開発援助」、「国際協力」、「開発協力」といった概念の変遷と使い分けについて国内外の動向を把握した。とりわけ、2015年2月に閣議決定された「開発協力大綱」の理念や重点政策を、国際的な貧困地図の変化や開発援助をめぐるグローバルな論争を背景にして分析し、国内外の雑誌に投稿した。また、中国およびブラジルによる南南協力の動向を資料や中国人・ブラジル人研究者との議論を通じて把握に努めた。これらBRICsの2か国による国際協力を当該地域の政治的文脈に位置づけて読み解くため、ASEANと中国との南シナ海をめぐる紛争と国際関係、環境問題に関する国際合意に対する東アジア諸国の対応、フィリピンおよびインドネシアの政治や法制度の動向、アジアにおける貿易と投資の動向、ラテンアメリカにおける資源をめぐる政治等について研究分担者による調査研究を実施し、その成果を全体で共有した。これらの研究成果をヨーロッパの研究者との共同研究につなげるため、9月にドイツを訪問し、フライブルク大学にあるArnold Bergstraesser Insitituteという政府系研究所のアジア研究者と共同ワークショップを開催した。このワークショップを通じ、「持続可能な開発目標」との関連で急激に議論が高まっているアジアにおける開発協力をめぐる政治と、より歴史的に「内発的発展」や「オータナティブな開発」として語られてきた「開発」や「持続可能性」という思想について、先方の研究者と共同研究を進めることで議論がまとまった。その関連で、来年度以降の国際シンポジウム開催費用の一部をまかなうため、共同で外部資金に申請するための研究プロポーザルを執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フライブルク大学のアジア研究者とともに共同ワークショップを開催し、本科研プロジェクトの研究テーマについて、ブレーンストーミングを実施した。さらに、その成果を今後の共同研究につなげるための概念的枠組みについて議論し、共同研究の成果を見据えた書籍出版にいたる計画を策定できたのは、平成28年度における大きな実績である。この計画をふまえて、帰国後に、名古屋大学とフライブルク大学が共同で運営する研究資金事業に申請するための研究プロポーザルを共同執筆した。その中で、国際開発をめぐる最先端の政治学的分析とあわせて、「内発的発展」や「オータナティブな開発」に関わる「開発」概念の歴史的系譜を、アジアとヨーロッパと双方の文脈で読み解く作業が必要であるとの認識に至った。この点は、本科研プロジェクトへの申請時に、具体的には構想していなかった点である。さらに、今年度中に明確化した研究プロジェクト全体の概念的枠組みと、研究究分担者による特定分野の事例研究との整合性を、今後の作業で整えていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
フライブルク大学の研究者との共同研究を進化させ、名古屋大学で共同ワークショップを開催する。その準備期間中に、前年度に合意した概念枠組みを研究分担者に提示し、彼らが分担している個別の事例研究と共同の概念枠組みとの接合点を明確化する。さらに、国際開発分野における韓国、中国の研究者とのネットワークを構築し、各国における国際協力政策の動向や「持続可能な開発目標」への対応について意見交換し、東アジア全体の潮流を分析する。また、「内発的発展」や「オータナティブな開発」等の思想的な背景や、開発を「幸福」度との関係でとらえる考え方等を探るため、ブータンやインドの開発思想についても調査研究する。研究の進捗状況をみながら、個別の研究成果を積極的に海外の学会で発表し、学術誌への投稿につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に研究代表者が本科研費に申請した時点では、研究代表者が次年度(平成28年度)も研究科長として再任されることは想定外であった。しかし、平成27年度後半になって想定外の事態となり、次年度の研究科長再任が決定したため、平成28年度については、研究科の管理運営業務に多大な時間を費やさざるを得ない状況となった。そのため、科研プロジェクト全体の統括や、海外での情報収集およびネットワーク構築作業において、時間的な制約を受けることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、中国を対象とする研究者およびインド・ブータンを対象とする研究者を研究分担者として追加し、平成28年度には手が回らなかった東アジアや南アジアの開発協力の実践と、開発概念そのものの歴史的系譜について、現地調査を含んだ研究活動を拡大する。また、ブラジルによる南南協力の動向についても、引き続き調査研究する。アジアを対象とする研究成果の一部をイギリスで開催される開発研究学会で発表できるよう、現在準備中である。
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