成人T細胞白血病(ATL)細胞におけるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)プロウイルスの解析からTaxは約60%の症例で発現していないことを明らかにした。HTLV-1プロウイルスのナンセンス変異の多くはAPOBEC3Gによって組み込み前に生じていることを明らかにした。また5'側LTRの欠失もプロウイルス組み込み前に発生しているものがあることを見出した。しかしHTLV-1のアンチセンス転写産物であるHTLV-1 bZIP factor(HBZ)ではナンセンス変異は見つかっていない。このことからHBZがATL細胞に必須であることが示唆された。HBZ遺伝子の転写は全てのATL症例で見つかり、また増殖促進効果も認められた。HBZトランスジェニックマウスではTリンパ腫と炎症性疾患の発生が認められ、腫瘍・炎症というHTLV-1によって起こる病態においてHBZが中心的な働きをしていることが明らかとなった。
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