研究概要 |
1.完全長cDNAの解析:翅原基、BmN細胞、休眠卵、微生物感染脂肪体の各完全長cDNAライブラリーから、約900クローンの完全配列を決定した。 2.カイコ特異的な遺伝子の機能解析:スクラーゼ遺伝子BmSuc-1は動物界には相同遺伝子が無く、細菌のβ-フルクトフラノシダーゼ遺伝子に相同性を示す。BmSuc-1の組換えタンパク質を発現させ酵素活性を確認した。桑の葉にはDNJというαグルコシダーゼの阻害剤が多量に含まれている。BmSuc-1はDNJで阻害されないので、カイコの桑葉への適応に貢献していると想像される。 3.SAGEを用いた卵母細胞分化機構の解析:カイコ蛹期卵巣のシストサイトのステージ1〜3と2〜3の各段階より得たRNAを用いて3'SAGE解析を実施した。ステージ1〜3に共通して最も多量に含まれていたのは868ntの新規な非コードRNAであった。このncRNAの部分配列を用いてdsRNAを作り、蛹の体腔中に注射したところ、一部の卵胞で形態的な異常が観察された。 4.卵巣に存在する低分子RNAの構造と機能:蛹期の卵巣のRNAをポリアクリルアミドゲルで電気泳動すると、29nt程度のサイズの低分子RNAが多量に存在していた。これらRNAをcDNAコンカタマーとしてライブラリー化し、67700のRNA分子の塩基配列を解読した。 4.クワコfosmidの配列決定およびカイコとの比較:クワコから10xゲノムのfosmidライブラリーを作製し、76,608クローンの5'および3'末端の塩基配列を支援班に決定していただいた。クワコのfosmid末端配列153,216リードをクエリーにして,カイコのゲノムに対してblastnを実行した。一塩基置換のみを数えると,クワコ・カイコ間の差異は2.3%であった。今のところ,クワコゲノム特有の遺伝子は見つからない。
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