研究課題
代数多様体上の連接層の導来圏を考えると、極小モデル・プログラムの基本的操作は導来圏の半直交分解と対応していると予想されている。商特異点のみを持つような代数多様体の間のトロイダルな極小モデル・プログラムに対しては、この予想は事実として成り立つことを以前証明した。しかし、もっと複雑な特異点を持つような代数多様体に対しては、導来圏の定義を修正しなくてはならないことがわかっている。そこで今年度の研究では、代数多様体が単純特異点(ディンキン図形に対応した特異点)のみを持つような場合を扱い、上に述べたストーリーがうまく拡張できるように導来圏の定義を行い、特異点上の相対的なセール関手がシフト関手と相似になることを証明した。これは、特異点の圏論的なクレパント解消を行ったことに相当する。単純特異点を持ったn次元の特異点のなかに、2次元や3次元のカラビヤウ多様体に住む対象が隠れていることもわかった。さらに、分数次元のカラビヤウ多様体に相当するような対象も見出された。以前証明した代数的ファイバー空間の半正値性定理は、高次元代数多様体研究のさまざまな場面で応用され重要である。一方、必ずしも既約ではないような代数多様体の研究も大切である。そこで、必ずしも既約ではないような代数的ファイバー空間に対して半正値性定理を証明した。証明では、混合ホッジ構造の重さフィルトレーションの解析を行い、組み合わせ的に自然な式を導出した。また、標準環有限生成定理や極小モデルの存在予想との関連では、因子の空間の有理多面体への分割の様子を研究し、いくつかの補助的結果を得た。
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Current Development in Mathematics2007
ページ: 43-76
Publ.RIMS, Kyoto Univ. 44
ページ: 419-423
http://faculty.ms.u-tokyo.ac.jp/~kawamata_lab/