研究課題
前年度の結果より、湿潤熱帯における土壌有機物動態モデル構築に際して、土壌酸性のパラメーター化と、砂質土壌における土壌有機物・微生物バイオマス動態の同時記述の必要性が明らかとなっている。平成18年度には、この点に関する理解をより深めるためのフィールド実験およびモデル実験を行った。1)近畿地方の森林において、皆伐区(以下CC区)、巻き枯らし間伐区(以下G区)、無処理区(以下C区)の3処理区を設け、有機物分解量を測定するとともに、林外雨、林内雨、土壌溶液中の主要イオン濃度より土壌酸性化速度を測定した。本設定により、土壌有機物・酸動態に及ぼす植物根および表層土壌中の微生物活動の影響を知ることが出来る。その結果、土壌からの硝酸イオン溶脱量はCC区で顕著に高く(5.5kg NO_3-N ha^<-1> yr^<-1>)、有機物分解に伴う硝酸化成の増加が明らかであったのに対し、G区ではO層で硝酸化成が起こるもののA層で微生物によって有機化されるため、硝酸イオンの溶脱は少なくなった。巻き枯らし間伐は、植物吸収を減少させるものの、表層土壌中の微生物活性(窒素の取り込み)は依然として高く、またC区同様有機酸が主要な陰イオンとして働くため、土壌酸性化の進行は弱度だった。2)前年度の結果を受けて、インドネシア・東カリマンタン州の異なる酸性度を持つ森林土壌(Ultisols-Oxisols系列)において、有機物動態およびそれに付随する酸動態を計測している。3)タンザニア・モロゴロ市のソコイネ農科大学実験圃場(砂質および粘土質土壌)にて作物栽培実験を行い、表層土壌(0-15cm)および土壌微生物中の有機炭素および無機態窒素、トウモロコシ中の炭素・窒素(栽培試験中のみ)を経時的に測定した。現在測定・解析を継続中であるが、昨年度砂質土壌において見られた乾湿変動時の土壌微生物動態の特異性が観測されるかどうかが重要な点となる。4)土壌微生物動態を組み込んだ有機物動態記述モデルを構築するための基礎実験を継続中である。多くの土壌において、土壌微生物の維持呼吸は総呼吸量の1/3程度であり、微生物による土壌有機物の代謝回転速度に対して土壌pHが大きく寄与することなどが明らかとなっている。
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