本年度は、平成17年度から取り組んできた本課題研究の最終年度に当たるため、各研究部門の研究成果のまとめと総括を主眼とした。具体的には、最終年度に相応しい取り組みを行い、「専門的教養知」とは何か、その現況と必要性並びに特質、その養成・教育に関する諸研究を広く継続的に考究するため、学際的な研究討議を可能にする生きた場としての研究会議・シンポジウム等を実施した。これまでの各年度において、「邂逅-実践フィールドと専門知の個性-」・「眼差-臨床実践フィールドに根ざした専門的教養知の作法を考える-」・「初心-研究フィールドとしての人間環境を考える-」・「素心-専門知に息吹く教養と美-」として行ってきた継続的な研究討議の各報告書をもとに、新たに多様な専門家の協力も得て、「縁起」と題して「専門性を生きる備えと教養-専門的教養知の働きとその教育・養成を考える-」を全体テーマに現段階での締め括り討議とした。 本課題研究は、各研究分担者の個別的取り組みはもとより、多様な専門家による異分野間の総合的研究討議を必然とする。毎年度の研究討議内容の詳細な記録を含む報告書(5冊各250頁程度)は、それ自体が貴重な成果と考える。研究協力を得た研究者は、延べ160人におよび、心身・精神・内科・小児・神経内科・免疫腫瘍等の医学、医学教育、都市デザイン、深海生物、水資源、教育社会学、メディア文化論、教育学、心理臨床学、教育・福祉行政、スポーツ指導、建築家、染色家、国際協力等を含む文理・年代・活動領域も多様な国際的視野に立つ第一級の専門家による、「科学・専門家コミュニケーション」ともいえるもので、総合して人類の諸課題に取り組む専門家連携における「専門的教養知」の生涯学習的な重要性と養成・教育の実現可能性を示唆するものと考える。
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