研究概要 |
本研究は,歯内埋込型無線ICタグを利用したセキュアな個人認証を目的として,これを実現する具体的手法を確立することである.一昨年度は口腔内に無線ICタグを実装する方法として,ICタグを小型化して歯内に格納する方法を確立した.今報告年度では無線ICタグを口腔周囲に格納するより実践的な手段を具体化し,さらにその安全性の確立を念頭に開発を行ってきた.その結果,これまではICタグの格納手段を歯に求めていたけれども,ICタグのさらなる小型化には電子チップのさらなるダウンサイジングなど,現在は開発途上にある技術の確立を待つ必要があるため,現状ではC3以上の齲蝕による歯内療法を実施した歯や,ブリッジのポンティック内などに適用が限られる.さらに,無線ICタグを歯に実装するには,無線ICタグには咬合力などに耐えうる高い物理的耐久性も要求される.そこで,無線ICタグを口腔内に設置できる症例範囲を,これまでの歯に限定していた方法から,軟組織を含む口腔周囲組織内を実装対象とするため,無線ICタグを歯周組織再生治療用のGTRメンブレン等に組み込んで歯周組織内に設置する方法を合わせて確立することとした.これは個人認証機能と併せ,将来的には生体センサーも無線ICタグに取り入れることで,生体内部情報のモニタリングによる健康維持システムへの発展をも目指すものである.この方法は従来からある歯周外科手術の過程で無線ICタグを無理なく生体組織内に導入できるので,既にある歯内埋込型無線ICタグと同様,歯周病治療の一環として患者に適用することが出来る点で医学的倫理条件をクリアしている.しかも歯槽骨に貼付することで,生体内に固定され安定して留置できるので,安全性についても問題がない.これは従来生体組織に埋設できるガラスカプセル型生体埋込タグには無い全く新しい発想のものであり,技術的に大きく進歩したものである.
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