本研究は、日本人英語学習者の持つコロケーション知識と英語母語話者の持つコロケーション知識とが、質的・量的にどのように違うのかということを、コーパス・反応時間・光トポグラフィーという三つのデータを利用して明らかにすることを目的としている。母語話者と学習者のもつ知識の決定的な違いは、記憶している定型表現の量と質の違い、すなわち、コロケーション知識の違いではないかと予測し、大量のコーパスを利用して定型表現の使われ方の違いを明らかにするとともに、学習者および母語話者の脳内に実在する知識との関係を、反応時間を計る実験と光トポグラフィーによる脳内の血流量の観測により明らかにする。 本年度は、コーパスの構築と反応時間の実験の準備を行なった。 1.コーパスの設計 コーパスの一般的設計基準と、学習者コーパス固有の基準を考慮し、コーパスの設計を行なった。広く公開できるものとなるように、技術的にはXMLに基づくフォーマットを採用し設計し、また、法的にも著作権に配慮した契約書を作成し、コーパスの収集にあたった。 2.コーパスの構築 中・上級の英語学習者に500語の英文エッセーを書いてもらい、新規に大規模学習者コーパスを構築した。国際学習者コーパス(ICLE)で使用されているトピックを採用し、国際的な比較ができるようにした。学習者の作文に、英語母語話者による添削文を付与し、学習者の作文の「不自然さ」を分析できるようにした。英語母語話者にも500語のエッセーを書いてもらい、学習者コーパスと対照言語学的に分析できるようにした。 3.コーパス専用サーバーの設置 専用のサーバーを設置し、上記3種類のコーパスデータを格納し、検索と解析を行なえるようにした。 4.反応時間測定実験の準備 定型表現を使った反応時間の測定実験を設計し、定型表現の反応時間測定プログラムを開発した。
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