本研究は、日本人英語学習者の持つコロケーション知識と英語母語話者の持つコロケーション知識とが、質的・量的にどのように違うのかということを、コーパス・反応時間・光トポグラフィーという三つのデータを利用して明らかにすることを目的としている。母語話者と学習者のもつ知識の決定的な違いは、記憶している定型表現の量と質の違い、すなわち、コロケーション知識の違いではないかと予測し、大量のコーパスを利用して定型表現の使われ方の違いを明らかにするとともに、学習者および母語話者の脳内に実在する知識との関係を、反応時間を計る実験と光トポグラフィ「による脳内の血流量の観測により明らかにする。 本年度は、コーパスの分析と反応時間および光トポグラフィーを使った観測実験の準備を行った。 (1)コーパスの分析 学習者のエッセー・学習者のエッセーのリライト・母語話者のエッセーの3種類のデータから成るコーパスから、主にn-gramの手法を使って、Biber et al.(1999)の言うLexical Bundlesを抽出し、それぞれのコーパスにおけるコロケーション表現の頻度と使用環境についておもに量的に分析し、統計的手法を使い、英語学習者と英語母語話者との間にどのような差があるかを明らかにした。 (2)反応時間と光トポグラフィーを使った観測実験の準備と予備実験 ・コーパスの分析から、学習者と母語話者との間で、共通して使われるコロケーション表現と、偏って使われる表現が明らかになった。 ・脳内での知識の存在を確かめるための反応速度と光トポグラフィーを使った実験で取り扱う項目(具体的なコロケーション表現)を、コーパス分析の結果を基に選択した。 ・具体的な実験項目をもとに、反応速度測定実験用プログラムを作成した。 ・また、光トポグラフィー装置を使った観測実験に関する実験方法を検討した。
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