研究概要 |
本研究の長期的目標は, 確率モデルのくりこみ群による解析という立場の中で, 確率過程の漸近的性質の導出の研究を中心にして, 最終的にくりこみ群という新しい解析学の可能性を追求することである. その前提として本年度は特に, 現象に動機づけられた理論的描像に基づく新しい解析学の可能性をさぐるべく, 一昨年にまとめた著書「統計と確率の基礎」をふまえつつ研究対象を柔軟に広げて, 確率ランキング模型と名付けた新しい粒子系のスケーリング極限(無限自由度確率過程)の発見に至った. さらに, これまで世界的に全く気づかれていなかった応用上の新展開の着想を得た. この模型の確率論的研究や, Burgers型偏微分方程式系との関係, ならびに, 実際的な問題への応用など, 研究上の広い可能性については, 今後の競争的資金の採択を待って研究上の展開を目指す. また, 現任地着任後直ちに, 長く東北大学数学教室の確率論研究を支えてきた同僚の竹田雅好教授と興した東北確率論セミナーは, 5年の時を経て定着した. 針谷祐准教授の着任や本科学研究費補助金研究課題の4年間を通じての支援の結果, 確率論を専攻する大学院生諸君を中心に大学内外の研究交流の一つの拠点として拡大した. 本年度ものべ18名の講師による研究セミナーを開いた. さらに, 院生諸君の研究集会参加や研究討論のための出張などを含めて本研究課題に基づく研究交流は著しい成果を上げた. 本年度の修士論文は, 新しい乱数生成法の杉田の基準からの検討(牛山辰哉), 確率ランキング模型に基づくインターネットランキング解析(竹島佑介), Malliavin解析に基づく局所非退化Wiener汎関数の密度のなめらかさ(永沼伸顕). などの成果がある.
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