研究概要 |
本研究では,中国北京の高能研究所(IHEP)で計画されているBES-III実験用の飛行時間測定器(TOF)の設計と製作が終了した。平成17年度から18年度にかけて,TOFカウンターに用いる高電子増倍管(PMT)の量産とその後の性能試験を行なってきたが,このPMTは,その後,これらのPMTは中国のIHEPに送りTOF本体のシンチレータに付けられ,BES-III実験インストールした。平成19年度には,TOFの校正が宇宙線を用いて行われ,実験の準備は整った。IHEPでは現在BES-IIIの実験に用いる加速器BEPC-IIの建設が終了し,平成20年度前半には,いよいよ実験が開始される予定である。 これに加えて,将来の国際リニアコライダーILCでの実験において長寿命の粒子を同定するなどの目的で,如何にしてTOFシステムを用いるかの検討を行なった。ILC実験ではTOFに特化した測定器は用いず,カロリメータにその役割を担わせるが,時間分解能を確保する為には,現在考案中の読みだし素子MPPCの信号をいくつか束にしてTDCに接続する。このカロリメータからの時間情報は,重い新粒子の質量の同定だけでなく,電磁シャワー中での光子などの速度の早い成分を同定する事で,エネルギーフロウの精密測定にも使えることがシミューレーションから理解され,国際協力実験ILDのカロリメータの検討を行なっている。
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