研究概要 |
本研究では,電気推進内航船でPOD推進器を活用した推進効率の改善を検討する。特に,2つのPOD推進器を前後にかつ2重反転となるように配置させる方式(タンダム型と呼ぶ)に着目し,このタンデム型POD推進器を有する船舶(タンデム型POD船と呼ぶ)の推進性能と航行安全性(操縦性能)について検討を加えた。国内初の電気推進船「千祥」をベースにタンデム型を図った「タンデム千祥」の船型計画を行い,模型船を作成して,広島大学船型試験水槽で抵抗・自航試験を行った。その結果をもとにプロペラ設計を行った。その結果,タンデム化により,推進性能が2〜3%向上することが分かった。 次に,操縦性能に関する基礎となるデータを取得するため,「千祥」模型船を用いて,広島大学船型試験水槽で拘束模型試験を実施した。試験は,オリジナル「千祥」と「タンデム千祥」について実施した。操縦流体力の拘束模型試験結果をもとに,操縦運動シミュレーション計算を実施し,操縦運動特性の把握を行った結果,「タンデム千祥」はPOD推進器の配置の関係上,センタースケグを小さくせざるを得ず,その結果,オリジナル「千祥」と比較して,針路安定性が大きく損なわれることが分かった。これを解決すべく,舵を40%程大型化すること,さらにセンタースケグをやめて,サイドにスケグを2枚配置する「タンデム千祥」の改良案を提示した。改良案により,針路安定性を解決する見通しを得た。 タンデム型POD船は,従来船と比較して,省エネの面で優れ,かつ従来船と同等以上の操縦性能を有することが,具体的なデータとともに初めて明らかになった。今後のタンデム型POD船の実用化により,性能の良い優れた船が内航船主に提供されることは,我が国の物流効率の向上,ひいては省エネによるCO2削減にもつながるであろう。
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