(1)エズリンのノックダウンマウスの作製・解析 これまでの我々の研究室でのマウスレベルでのERM(エズリン/ラディキシン/モエシン)蛋白質の機能解析の結果からERM蛋白質/アクチンフィラメント系が細胞膜蛋白質の分布の制御までを含めて細胞アピカル膜を構築するという所見が得られた。ERM蛋白質のひとつであるエズリンのノックダウンマウスの胃を用いて「アピカル膜への膜小胞の融合におけるERM蛋白質の役割」の検討を行った。具体的には、胃酸の分泌の生理学的測定をエズリンのノックダウンマウスにおいて行い、また、胃酸分泌を促進するヒスタミンの存在下、非存在下での胃壁細胞の状態を電子顕微鏡により明らかにした。その結果、正常の胃壁細胞では、HK-ATPaseの密に存在するtubulovesicleが細胞アピカル膜へ融合することによって胃酸分泌が起こるが、エズリンノックダウンの胃壁細胞においてはこのような融合がおこらないという結果が得られた。 (2)細胞接着装置の構成成分の解析 我々は、1989年に肝臓より調製した毛細胆管画分から細胞接着装置の濃縮した画分を調製する方法を確立し、その画分を用いて細胞間接着装置やアピカル膜構成蛋白質の同定を行ってきた。質量分析法の飛躍的な進歩を取り入れることで、細胞接着装置に存在する数種の新規蛋白質の同定を行うことができ、さらにRNAiなどを用いて、機能解析を行っている。 (3)中心体構成蛋白質Odf2をノックアウトしたF9細胞の解析 この細胞を用いて、Odf2の機能を、特に中心体とアピカル膜との相互作用という観点から解析を進めた結果、Odf2は中心体がアピカル膜に結合するために重要で、その結合の結果、プライマリーシリアが形成されることが判明した。従って、Odf2をノックアウトした細胞においてはプライマリーシリアが形成されなかった。
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