1、ERMタンパク質のノックダウンマウスの作製・解析-ノックアウトマウスの解析により、肝臓において、RadixinはビリルビンのトランスポーターMRP2を毛細胆管管腔面にアンカーすることで、その機能維持に働いていることが明らかになった。ノックアウトマウスでは、MRP2が機能できなくなり、Dubin-Johnson症候群型高ビリルビン血症を惹起する。今回、我々は、この症候群が示す組織・血液学的個体差が、遺伝的バックグラウンドの違いによるバソラテラル面でのMRP3の発現量差を反映する可能性を示した。2、細胞接着装置の構成成分の解析-我々は1989年に肝臓より調製した毛細胆管画分から細胞接着装置の濃縮した画分を調製する方法を確立し装置を構成する主要タンパク質を同定して来た。本研究課題では、質量分析法の飛躍的な進歩を取り入れることで、これ迄の方法では同定できなかった多くの新規細胞接着装置構成成分の同定を行うことができた。タグを付けたこれらのタンパク質の多くは、予想通り細胞接着装置に局在した。そこで、これらのタンパク質に対する抗体を作製し、培養細胞レベルでのRNAi実験を行っている。将来的には、これらのタンパク質が如何に協調し合いながら細胞間接着を担って行くかを明らかにしたい。3、中心体構成タンパク質Odf2をノックアウトしたマウスの解析-Odf2コンディショナルノックアウトマウスでは、細胞分裂は影響を受けず、一次繊毛のみが臓器特異的に消失すると思われる。このマウスを用いることで、今まで長い間謎であった一次繊毛の個体での役割を解析できると思われる。Odf2は、精子の外側緻密線維(ODF)の構成成分の1つでもあり、その消失は、雄性不妊になる。少量発現が低下するだけでも不妊になる為、コンディショナルノックアウトマウスの作製は困難を極めたが、漸くヘテロ世代マウスの確立に到達した。培養細胞レベルでは、一次繊毛の持つ予想外の機能も示唆されており、個体解析は、大きな意義を持つはずである。
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