研究概要 |
本研究は、SAGEライブラリーの比較から新しい胃癌特異的発現遺伝子を抽出し、標的治療を視野に入れた診断系を確立することを目的に行ない、以下の結果を得た。 (1)胃癌SAGEライブラリー(GEO accession no.GSE545)と正常14臓器との比較および定量的RT-PCR法により、APIN, MIA, MMP-10,DKK4,REGIV,など胃癌特異的発現遺伝子9個を同定した。 (2)免疫染色による蛋白発現の検討において、MIAとMMP-10では発現と悪性度、予後との相関が見い出された。REGIVでは、胃癌の他に、大腸癌、膵癌、消化管カルチノイドが陽性であった。 (3)MIA, MMP-10,REGIVについては、ELISAにより血清レベルを測定し、胃癌患者中REGIVでは36%、MMP-10では95%が高値を示した。 (4)新規癌特異的遺伝子候補の機能解析に関しては、REGIVにおいて、5-FUによるアポトーシスの抑制には、EGFRのリン酸化、caspase-9の抑制が関与することを明らかにした。SPC18については、発現がステージ・転移と相関すること、胃癌細胞株のSPC18強制発現系において細胞浸潤を促進することを確認した。 (5)胃癌特異的発現遺伝子のSNPの分子疫学的検討に関しては、胃癌の新規癌抑制遺伝子の候補であるCLDN-18遺伝子において、5'UTRにG/AのSNPを同定し、ジェノタイプについての症例対照研究の結果、A/GおよびG/G型が胃癌症例で有意に高頻度であり、Odds ratioは5.17(2.01-13.3)であった。 (6)SAGEで同定した癌特異的発現遺伝子を含む207遺伝子を搭載する三次元オリゴDNAカスタムアレイを用いた約20症例の胃癌における発現と臨床病理学的事項との解析より、T/N/stageと有意に相関する23遺伝子を同定した。
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