本研究は、全体が高精細な画像を見たときと印象が変わらない多重解像度立体画像システム(中心部から周辺部に行くに従って解像度が徐々に劣化するような画像を提示するシステム)の作成を目指したものである。 システム構成を検討するために心理物理学的実験を行った。刺激として、仮想空間に小球体を多数表示した画像を用いた。実験1と2では、中心部に表示する高精細領域の大きさと周辺部に表示する画像の解像度の劣化程度を操作し、全体が高精細な原画像と印象が変わらない二重解像度画像について検討した。最初に原画像を1秒間提示し、次に原画像かあるいは二重解像度画像を1秒間提示した。被験者には画質が変化したかどうかを回答させた。 実験3は、三重解像度画像、二重解像度画像、全体が低精細な画像を用い、それぞれが原画像と識別することができるかどうかの弁別実験をおこなった。その結果、三重解像度画像では原画像とほとんど識別できないことがわかった。 実験結果に基づき、3つの撮影画角の異なるカメラ画像(撮影画角:21度、42度、68度)を、画像処理により撮影画角と対応するように重ね合わせて提示する、三重解像度立体画像システムを作成した。撮影装置には左右眼用にそれぞれ3台のカメラを用いた。画像の中心領域となる画像を得るカメラ(撮影画角21度と42度)は、重ね合わせた画像の境界部を完全に一致させるため、ハーフミラーを利用してカメラの光軸を一致させた。コンピュータでこれらの画像を合成し、表示した。左右眼用の画像は、2鏡式ホイートストン立体鏡を用いて、観察者が立体視できるようにした。
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