本年度も昨年度に続き、公共部門の財政規律を促すインフラとしての公会計の機能に焦点を充て、その中で主要な情報になると考えられる負債情報の認識・開示のあり方を理論面国際比較の面から研究した。特に、本年度は、(1)先進主要国で進行している予算制度改革-複数年度予算制度の検討・導入、予算外項目(オフ・バジェット)の透明化のための開示制度の検討なとに注目して1998年に発表されたIMFコードや1999年に発表されたOECDコードが、オフバジェット項目の透明化と財政赤字の削減の相関性に着目して、(最)優良慣行を定め、それの普及を試みている実態の調査・検討を進めた。(2)また、交付税措置に係る国と地方の債権・債務関係や債務負担行為をめぐるわが国での開示の現状、総務省による新しい起債制限方式の検討、これらをめぐる研究動向を調査・サーベイした。その上で、公的債務に対するモニタリングを実効あるものにするには、公会計上での負債の認識を債務の確定性に固執した方法から期末時点でのBest Estimateを基本とする方法に切り替えることが必要であるとの暫定的結論を得た。具体的には、交付税措置に係る国の地方に対する債務を例にして吟味した結果、数々な不確定要素を孕むとはいえ、その金額的重要性に鑑みると、膨大な算定要素を財政力指数に集約して、毎期、被交付団体のこの指数の変動にスライドさせて国の債務を洗い替えしていく方式が測定の信頼性と有用性を均衡させる最善の方法ではないかとの暫定的結論を得た。ただ、その場合でも、交付税措置に係る国の債務が各種国税の一定割合に制限され、地方公共団体全体の基準財政需要に対するマクロベースの財源保障を意味するのに対して、交付税措置に係る地方公共団体の債権はミクロベースの債権の積み上げであるというねじれ現象をどう評価し、この乖離にどう対応するかは今後に残された重要な研究課題である。 以上のような研究を踏まえ、2006年12月16日(土)に財政学研究者と共催で「予算制度改革と公会計の役割」と題するシンポジウムを開催し、そこで「財政運営のインフラとしての公会計の役割」という論題の研究報告を行った。
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