本研究を通して、教員養成を行っている大学及び介護等体験の実習先である特別支援学校や社会福祉施設等がどのような課題や問題を抱えているのかを明らかにするとともに、より効果的な介護等体験の実施方法について検討を行ってきた。また、介護等体験を実際に体験した学生を対象として、介護等体験を通して、どのようなことを学ぶことが出来たのか、大学等において、どのようなことを事前に学んでおく必要があったのか、介護等体験にどのような期待を抱いていたのか、さらに、介護等体験を経験することで教師への志望動機がどのように変化したのか等についての検討を行った。研究の一貫として実施した調査研究から、通常の学級において、特別な教育的配慮を必要とする子どもがかなり存在することも明らかになった。また、地域の学校と社会福祉施設との連携が不可欠であることが明らかになったが、同時に両者の連携が未だ不十分であることも示唆された。昨今、教育場面におけるバリアフリー化、障害のある人や高齢者への理解等の必要性をはじめとして、教育における福祉的な知見が重要視されてきている。子どもの教育に従事する教師や将来教師を目指している者にとって、教育のみならず福祉に関する知見は不可欠なものである。従来は家庭や地域社会の中で育まれてきた高齢者等への理解が、核家族化や少子化等の現代社会のもつ特性の中で、家庭や地域社会において高齢者等と自然に触れあう機会が激減している。こうした現状を解決するための方策として設置された介護等体験の制度であるが、新しい制度であるため多くの課題が山積している。本研究では、介護等体験の有効的な実施方法等について検討することにより、現代の教育を担う教師に求められる意識や知識等を明らかにし、それらをどのように育てていくかを考えてきた。本研究で得られた成果や課題等を踏まえて、今後、さらなる研究を継続していこうと考えている。
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