研究課題
基盤研究(C)
軌道の方法を用いて可解リー群のユニタリ表現および調和解析の研究を長年行ってきた。特に近年は冪零リー群の誘導表現を調べ、それらについて得られた諸結果を既約表現の部分群への制限の研究に応用してきた。フランスやチュニジアの共同研究者達との仕事を通してCorwin-Greenleafの可換性予想なるものを証明することができ、2005年度日本数学会解析学賞を受賞した。今年度は冪零リー群の単項表現に関するCorwin-Greenleafのもう一つの予想、つまり単項表現が有限重複度をもつとき、関連する直線束上の不変微分作用素のなす多元環はリー環の双対ベクトル空間のあるアファイン部分空間上の不変多項式環に同型であろうという予想の確立に努めてきた。パリ10大学の共同研究者のG.Lion氏およびB.Magneron氏との議論を通して一つの証明にたどり着き、6月にパリで開催されたパリ第7大学のM.Duflo教授の退官記念集会に参加し、その機会を利用して問題の証明を彼等とチェックした。この作業は今だに続いている。本質的な箇所の証明に確証を得るには今少し時間が必要である。第2の課題として、筆者は長年他の未解決問題を抱えてきた。指数型可解リー群の既約ユニタリ表現を軌道の方法により実現するとき、その同値類は途中で利用する偏極環の選び方に依らない。そこで2つの偏極環からの2つの実現間の繋絡作用素を具体的に構成したい。形式的な繋絡作用素は早くから知られていたが、そこに現れる積分の収束性が問題であった。最近この点を突破するための一つのアイデアを得たので、9月にチュニジアのMonastirで開催されたサマースクールに講師として参加したとき、共同研究者のフランスMetz大学教授のJ.Ludwig教授およびチュニジアSfax大学のA.Baklouti教授とこのアイデアおよびそれを用いた繋絡作用素の研究について議論した。その後J.Ludwig教授が鳥取大学の井上順子氏の招きで来日されたとき、飯塚に来ていただき議論を続けた。その結果前述の形式的繋絡作用素を真の繋絡作用素として意味付けることができたかも知れない。現在論文の最初の原稿を書き上げ、3人で内容確認を行っているところである。
すべて 2005
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Infinite Dimensional Harmonic Analysis III, World Scientific Publishing Co.
ページ: 17-35