研究概要 |
単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、低次元系の電子相関効果の典型例として基礎物理学的観点から注目されているだけではなく,空洞構造(SWNT内やバンドル内のSWNT間)を利用したSWNTインターカレーション化合物が,材料科学の対象として注目されている。本研究では、SWNTとフラーレンピーポッド(C_<60>やC_<70>フラーレンを内包したSWNT)の特異な電子状態を、超高分解能分光実験やNMR実験によって明らかにして、新規ナノ構造体の物質設計に役立てようとするものである。18年度は、光電子分光によって,C_<70>フラーレンピーポッドとGd@C_<82>(Gd金属を内包したC_<82>)ピーポッドの電子構造の測定を行った。 C_<70>ピーポッドの光電子分光:C_<70>ピーポッドとSWNTの光電子分光を,高エネルギー加速器研究機構のフォトン・ファクトリー(KEK-PF)で行った(課題番号2006G221)。ピーポッドのスペクトルからナノチューブのスペクトルを差し引くことで,内包されたC_<70>の電子構造を明らかにした。その結果,内包されたC_<70>の電子構造は,今までの理論予想とは異なり,C_<70>固体のそれとかなり似ており,カーボンナノチューブ-C_<70>間相互作用は弱いことが分かった。 Gd@C_<82>ピーポッドの光電子分光:Gd@C_<82>ピーポッドのGd 4d-4f共鳴光電子分光をKEK-PFで行った。hν=150eVの共鳴極大スペクトルからhν=140eVの共鳴極小スペクトルを差し引くことで,C_<82>に内包されたGdの4f電子状態を明らかにした。その結果,内包されたGdの価数は3であり,Gd 4fの結合エネルギー位置は,Gd@C_<82>固体のGd 4f位置と比べ大きくなることが分かった。
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