2003年4月に南極・昭和基地に4K冷凍機を装備した液体ヘリウム常時補充型の超伝導重力計CT#043を導入し、以降連続観測を継続している。17年度においては、氷床変化に関連する重力変化を探すために、この重力計によって観測された2003年および2004年のデータを用いて、1年半余りの期間の重力のトレンド変化を求め、大気や海洋以外に起因する重力変化を求めることを目標とした。このために、まず、異常データや跳びの検出などの前処理を行い、潮汐解析プログラムBAYTAP-Gを用いて調和解析を行った。調和解析により短周期の地球潮汐および気圧変化の影響を取り除いた後、Iwano et al.(2005)により得られた長周期潮汐ファクターを用いて長周期潮汐を取り除き、さらに、器械ドリフトと思われる線形トレンドとIERSで得られている極位置データから極運動の影響を求め、取り除いた。こうして得られたトレンドは昭和基地・西の浦験潮所で観測されている潮位のトレンドとかなり良い対応がみられ、潮汐変化以外の海水位の変動も重力変化にかなり影響していると考えられる。今後、海水位の変動による影響を除去し、その後に残された重力変化のなかに、氷床変動と関連するシグナルが含まれていないか調べる予定である。 一方、氷床域の高度変化を直接調べるために、レーザー高度計を搭載した衛星ICESatデータを一部取得し、主に東南極の氷床域について観測時期の異なるデータ間の高度変化を調べている。また、南極内陸において干渉合成開口レーダー手法(InSAR)を適用して高度変化を求めるためにCバンド合成開口レーダーデータを一部取得しており、InSARにより氷床表面高度の変化を求める予定である。また、レーザー高度計データと合成開口レーダーを組み合わせてより高精度に高度変化を求める方法について考察していきたい。
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