急潮を精度良く予測するためには、台風などの荒天時においても密度成層場を正確に把握する必要があることから、耐久性の高い海況モニタリングシステムを開発し、その試験運用を行った。これと同時に、発生機構が未解明のままとなっている日本海の急潮を対象として、予報モデルの高精度化のための研究を行った。 1.海況モニタリングシステムの開発と運用 日本近海で海水の密度に最も寄与する温度場を約60m深まで(設置海域によっては100m深まで可能)リアルタイムで計測、取得できるブイ式(耐圧式)海況モニタリングシステムを開発し、神奈川県水産技術センターが管理している係留ブイ(相模湾奥の小田原沖)に設置した。得られたデータを順次Webサイトに公開するシステムを構築した。このデータセットから、1次的な急潮警報を発令するための統計処理を行った。さらに、空間構造解析、時系列データ解析などを通して、4次元(時空間)構造のデータセットを構築するためのアルゴリズムの研究を行った。ここで得られたアルゴリズムやデータセットは、次年度以降に実施するデータ同化モデルに使用される。 2.数値モデルの改良と精度向上 最近、急潮による甚大な被害が報告されている日本海沿岸域において、台風に伴い発生する急潮の力学機構を明らかにすること、当該研究者らが開発している3次元レベルモデルの予報精度を向上することを目的とし、若狭湾で発生した急潮を例として研究を進めた。その結果、日本海での急潮は台風の風によって励起される沿岸捕捉波だけでなく近慣性周期内部波が重なることで周期的に強められる機構が明らかにされた。また、実測した風応力を空間最適化内挿法により補間し、外力として与えることによって、急潮時の強い沿岸流を定量的に再現することができるようになった。しかしながら、発生する強流の時刻や非線形性についての課題が残された。
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