研究概要 |
日本海生成前の漸新世〜前期中新世植物化石群の組成的・時代的変化と葉状特性による陸上古気候の変遷を明らかにし,当時の古地理・古地形の復元資料を得るため,平成18年度に引き続き,瀬戸内沿岸地域の漸新世植物化石群と能登半島,秋田県の前期中新世の植物化石群の調査・検討を行い以下のような成果を得た. 1)神戸層群の"漸新世"植物群は,始新世後期から漸新世前期にわたる植物群として捉え直す必要があるが,山口県や香川県の瀬戸内海沿岸の植物化石群とともに,始新世中期の最温暖期以降の植物群として位置づけられる.この始新世後期〜漸新世後期植物群と,山口県北部や九州西部の漸新世後期植物群から,漸新世の植物群,植生,および古気候の変化が求められた. 2)前期中新世植物群については,本州,九州の多数の植物化石群の検討から,約2000万年前を境に温常系の阿仁合型植物群から温暖系の台島型植物群への移行することを確かめた. 3)2000万年前に近い台島型植物群には,ブナ属や落葉広葉樹の優占した特有の植物群が存在し,それらの組成的特徴を明らかにし,葉状特性からみた古気候復元を行った. 4)阿仁合型植物群の組成は,日本海沿岸のものと太平洋沿岸のものとで異なり,日本海生成前の内陸側から太平洋沿岸の当時の古地理条件を反映している.これに対して,台島型植物群では,緯度的な変化は明らかであるが,内陸側から太平洋沿岸への顕著な組成的変化は認められない.
|