研究概要 |
日本海生成前の漸新世〜前期中新世植物化石群の組成的・時代的変化と葉状特性による陸上古気候の変遷をあきらかにし,当時の古地理・古地形の復元資料を得るため,秋田県,福島県,岐阜県,瀬戸内沿岸,および北九州での野外調査と化石資料の採集を行った.また,既存の化石コレクションを再検討と化石層の年代測定を行った結果,以下のような成果を得た. 1)いわゆる漸新世植物群は,始新世後期〜漸新世前期植物群(神戸,土庄,岐波植物群など)と漸新世後期(野田,相浦植物群など)の2型に分けられ,それぞれ寒暖の変化が認められるものの,始新世中期の新生代最温暖期以降の現代化した,暖温帯植物群として位置づけられる. 2)前期中新世植物群は,その前半の温帯系阿仁合型植物群と後半の温暖系台島型植物群に分けられているが,その移行期は2000万年前(20 Ma)であること,および20〜17 Maの台島型植物群は16 Ma前後のものと異なり,フナ属や落葉広葉樹が優占する一方,落葉樹の台島型要素(Comptonia, Liquidambar, Parrotia, Quercus miovariabilisなど)を伴った植物群であることを明らかにした. 3)植物化石群の組成的特徴と葉状特性による古気候解析から,日本海生成前の前期中新世植物群の緯度的変化と東西(大陸内陸側と太平洋沿岸域)の変化を調べた.阿仁合型植物群にみられた内陸側-沿岸域の変化は台島型植物群では顕著な差が見られない.これは日本海が生成を始める,当時の古地理的な発達を強く反映している. 4)これらは日本海周辺の地域的現象を含んでいるが,海岸低地の植物化石群から明らかなように汎地球的気候変化も示されている.
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