研究概要 |
1.本年度は、先ず、新奇な架橋配位子を合成し、元素分析、1H-NMR、質量分析,CV等により、同定・キャラクタライゼーションを行った。すなわち、1,8-Bis(dipyridio[2,3-e:2',3'-g]-1H-benzo imidazole)anthracene : bdpbian,1,2-Bis(dipyridio[2,3-e:2',3'-g]-1H-benzo imidazole)cyclohexane : bdpbichxnがそれぞれ収率4.9%、10.1%で得られた。これらの架橋配位子は金属配位基のフェナントロリン(phen)が約4.8Å,1.4Å離れて結合しており、前者は平行、後者は約60°の角度で結合しており、2つのphen基は互いに重なるように配置することにより立体障害を緩和していると考えられる。 2.これらの架橋配位子を用いて、レニウム(I)トリカルボニル二核錯体の合成を試みた。現在、ゲル濾過クロマトグラフィーにより精製を行い、元素分析、質量分析を用いて、同定を行った。架橋部位の距離により二核化の容易さは異なり、bdpbian配位子の二核錯体は二核化が困難であり、収率が著しく低かった(約1%)が、bdpbichxn配位子の二核錯体は6%で得られた。現在、UV-vis吸収スペクトル、CV等によりキャラクタライゼーションを行っている。 3.今回合成した配位子やレニウム(I)二核錯体について、Gaussian 03パッケージの密度汎関数法による構造最適化計算および基底状態の分子軌道計算を行った。bdpbian配位子の分子軌道計算より、アントラセンの分子面とphenの分子面とは約60°ねじれており、両発色団間の電子的結合は弱いことが分かった。 4.レニウム(I)トリカルボニルポリピリジン錯体は400nmより短波長に強い吸収を持つが、これより長波長の光を有効に吸収しないので、可視光の有効利用のために可視部に強い吸収を持つ、ルテニウム(II)ポリピリジン:Ru(bpy)_2^<2+>を結合したRe(I)-Ru(II)複核錯体を合成し、両発色団間のエネルギー移動について検討した。^3MLCT状態エネルギーの高いRe(I)中心からRu(II)中心へのエネルギー移動は効率的に起こるが、逆向きには吸熱的で有効ではなかった。Ru(II)中心の^3MLCT状態エネルギーの高い発色団を組み合わせた複核錯体の合成を現在試みている。 5.上記4.の一部は2005年12月15-25日開催されたInternational Chemical Congress of Pacific Basin Societiesで報告した(INOR 0370)
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