研究概要 |
内分泌かく乱物質による毒性発現とその動物種差・性差・年齢差の解析を行い、以下の成果を挙げた。 1 雄性CDF_1マウスを用いた検討から、肝発がん性を有するTrp-P-1は精巣アンドロゲン合成酵素関連遺伝子の発現抑制を介して血中総テストステロン量を低下させ、次いで肝Cyp1a2発現誘導を惹起することを見いだした。これら知見は、Trp-P-1が内分泌かく乱作用を有する可能性を提示するものである。 2 内分泌かく乱作用が疑われている硝酸鉛(LN)の肝cholesterol 7 α-hydroxylase(CYP7A1)遺伝子発現低下作用に注目し、その発現低下機構をTNF-αノックアウトマウスを用いて検討した。その結果、LNによるCYP7A1遺伝子の発現低下には、これまで考えられてきたTNF-αよりもむしろIL-1βの関与が示唆された。 3 多くの化学物質による血中総チロキシン総量低下は、肝UDP-glucronosyltranferase(s)(UGTs)の誘導に起因すると考えられてきたが、UGT1A isoforms欠損ラットであるGunnラットを用いて、フェノバルビタール(PB)投与時の血清チロキシン低下とUGTsの活性(発現)変動との関連性を検討した結果、そこには正の相関性は見られず、血清チロキシン量低下には未知の機序が存在することを明らかにした。 4 Penta-CB(2,2',4,5,5'-pentachlorobiphenyl)のメチルスルフォン代謝物生成と血清チロキシン総量低下作用との関連性をラットおよびマウスを用いて比較検討した結果、Penta-CBのメチルスルフォン代謝物の生成と血清チロキシン量の低下には正の相関は見られないことが明らかになった。
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