内分泌かく乱物質による毒性発現とその動物種差・性差・年齢差の解析を行い、以下の成果を挙げた。 1 内分泌かく乱作用が疑われている硝酸鉛は、肝肥大の惹起と、肝コレステロール(Chol)合成亢進作用を有している。本研究では、硝酸鉛投与後の、Chol生合成の律速酵素3-hydroxy-3-methylglutaryl-CoA reductase (HMGR)遺伝子およびその転写因子であるsterol regulatory element binding protein-2 (SREBP-2)遺伝子の肝臓での発現上昇、肝総Chol量の増加について、性差が見られるかをラットにおいて検討した。その結果、SREBP-2遺伝子、HMGR遺伝子の発現亢進および肝臓総Cholの増加が、雄性ラットが雌性ラットより早く起こること、雌雄ともに、HMGR遺伝子発現と肝臓総Chol量の増加がSREBP-2遺伝子発現の増加に先立って起こることが明らかとなった。 2 内分泌かく乱物質のなかにはaryl hydrocarbon receptor (AhR)を介して作用を発揮するものが数多く知られている。また、異物代謝酵素シトクロムP4501A(CYP1A)サブファミリーはAhRによって転写制御を受け、内分泌かく乱物質など異物の代謝活性化や解毒に関与する。本研究では、CYP1Aサブファミリーの発現機構を明らかとするために、CYP1Aサブファミリー酵素誘導において異なった選択性を有する3種のnitroanisidine異性体を用い、それらの酵素誘導におけるラット、マウス、モルモット間での種差を検討した。その結果、ラットにおいてのみ、肝CYP1Aサブファミリー酵素の誘導が見られ、その誘導機構に種差があることを明らかにした。また、その誘導性にはAhR非依存的な転写制御機構が関与する可能性も明らかとした。
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