研究概要 |
デスレセプターDR4,5のシグナル伝達に重要なDAP3の癌細胞における役割、および機能を解明する目的で、DAP3に会合する分子をyeast two-hybrid法によりスクリーニングした。その結果、会合分子として得られた分子の一つがLIP1分子であった。LIP1は癌抑制遺伝子LKB1分子の機能調節因子であることが示されている。人の培養細胞にこれらの遺伝子を導入してタンパクを発現させ、免疫沈降法によりDAP3はLIP1及びLKB1に会合することを確認した。さらに、これらの分子の機能を明らかにするため、TRAIL感受性の低い骨肉腫細胞を用いて解析を行った。骨肉腫細胞で野生型のLKB1分子を強制発現させると、TRAIL投与後の生存コロニー数が減少し、逆にドミナントネガティブ変異体であるLKB1(K78M)を導入すると生存コロニー数は増加した。したがってLKB1分子はTRAILによるアポトーシス誘導の程度を増強する機能をもつ可能性が示唆された。また、野生型のLKB1を遺伝子導入すると、TRAIL刺激によるcaspase-8,9,3の活性化が短時間で誘導された。以上の結果、骨肉腫細胞において、LKB1分子はTRAILによるアポトーシス誘導を促進し、その進行を時間的にも速める機能を有する可能性が示唆された。DAP3,LKB1の機能を制御することによってTRAIL低感受性の癌細胞にアポトーシスを誘導し、効果的な癌治療への応用が可能である。また、デスレセプターDR6に会合する分子として同様にCHPR-59という分子をクローニングした。この分子を発現させるとDR6によるアポトーシスの誘導の程度が増強された。CLIPR-59に対するsiRNAを用いて発現を抑制するとDR6のアポトーシス誘導の程度が低下し、CLIPR-59がDR6のアポトーシス誘導に重要であることが示された。
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