研究課題
ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)に対する標準治療の3剤プロトンポンプ阻害薬(PPI)/アモキシシリン(AMPC)/クラリスロマイシン(CAM)療法の除菌の成否に関わる主な因子に、H.pyloriのCAM耐性とPPIの代謝酵素のCYP2C19の遺伝子多型がある。そこで、それを事前に検査してからのテーラメイドの除菌療法を行うこととした。CAM耐性の有無は、H.pyloriのCAM耐性遺伝子変異である23S rRANのA2142G, A2143G変異をインベーダー法で検査し、CYP2C19の遺伝子多型もインベーダー法で検査した。CAM感受性菌の場合では過去の検討でランソプラゾール(LPZ)60mg分2,AMPC1.5g分3、CAM0.6g分3にてCYP2C19のIMで高い除菌率が達成されたが、そのIMではLPZ30mgを1日2回投与による24時間平均胃内pHは5であり、このpHを達成するためのLPZの用量・投与方法をCYP2C19の多型別に検討すると、RMではLPZ30mgの3回、IMではLPZ15mgの3回、PMではLPZ15mgの2回投与であった。CAM耐性菌に対して、以前の検討でCYP2C19のPMではAMPCの500mg1日4回とomeprazole(OPZ)20mgの1回投与でCAM耐性に関わらず除菌成功したため、CYP2C19のPMでOPZ20mgを1週間内服した際の24時間平均胃内pHを検討したところ5.8程度であった。このpHを達成するためのLPZの用量・投与方法をCYP2C19の多型別に検討すると、RMではLPZ30mgの4回、IMではLPZ15mgの4回、PMではLPZ15mgの2回投与とした。そして、抗生剤はAMPCを用いるがAMPCの薬物動態やPAEが殆どないことを考慮して500mgの1日4回投与を2週間行った。H.pylori陽性患者300例のうち150例でテーラーメイドの治療を行い、残りの150例で標準治療を行った。テーラーメイド群で、まず、H.pyloriがCAM耐性か感受性かで振り分け、CAM感受性菌に対しては、抗生剤はCAM200mgとAMPC500mgの1日3回投与を1週間行い、PPIの用量はCYP2C19の多型に応じて上述の用量・投与方法をした。CAM耐性菌に関しては、AMPC2.0gの4分割投与を行い、PPIの投与方法もCYP2C19の多型に応じた上述の投与方法で2週間の治療を行った。すると、テーラーメイド群の除菌率は全体として90%を超え、一方、標準化治療群では70%程度であり、個別化療法群での除菌率が有意に高まった。テーラーメイドのH.pyloriの除菌療法は初回から高い除菌成功率を達成でき、有用な治療戦略であると考えられた。
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