研究課題/領域番号 |
17590608
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今谷 晃 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助手 (30333876)
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研究分担者 |
飯島 克則 東北大学, 病院・助手 (60375003)
大原 秀一 東北大学, 高等教育開発推進センター, 助教授 (40223929)
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キーワード | 発生・分化 / 発現制御 / シグナル伝達 / 免疫学 / 胃 |
研究概要 |
H.pylori感染胃粘膜ではTh1優位の免疫応答がおこり、胃粘膜萎縮や腸上皮化生が進展し発癌の母地となる。HMGボックス転写因子Sox2は幹細胞を中心に脳、肺、胃の器官発生・分化維持に関与している。そこで本研究では、H.pyloriとその関連サイトカインによるSox2発現調節メカニズム、更に腸上皮化生関連遺伝子Cdx2との相互作用について、その細胞内シグナル伝達機構を含めて明らかにすることを目的とした。 H.pylori感染胃粘膜におけるSox2の発現局在を確認(17年度研究実績)後、H.pylori生菌、Th1関連サイトカインであるIFN-γ、IL-1β、TNF-αおよびTh2関連サイトカインであるIL-4を用いて胃癌細胞株MKN45およびAGSを刺激し、Sox2のタンパク発現誘導を検討した。また、STAT6siRNAおよびEMSAを用いてそのシグナル伝達機構について解析した。更にヒト胃粘膜におけるH.pylori除菌前後でのpSTAT6活性についても免疫組織化学を用いて確認した。次に、Sox2siRNAを用い、Cdx2、MUC5ACおよびMUC2の発現を検討した。 本研究実績として、IL-4刺激によりSox2の発現は、MKN45とAGS両者において誘導された。他のサイトカインでは直接的な発現量の変化を認めなかった。IL-4刺激によるSox2発現誘導はSTAT6siRNAで阻害され、EMSAにおいてもSox2特異的なSTAT6probeでバンドの増強とsupershiftを認めた。このSox2発現誘導はH.pyloriおよびIFN-γによってSTAT6のリン酸化を阻害することによって抑制され、その際MUC5ACの発現も抑制された。ヒト胃粘膜におけるpSTAT6 indexは、除菌後有意に増加した。更にSox2 siRNAによるSox2の発現阻害することにより、Cdx2とMUC2は発現誘導、逆にMUC5ACは発現抑制された。 本研究により、IL-4によるSTAT6シグナル伝達を介したSox2の発現調節機構が、胃分化維持調節に重要な役割を果たしていることを見いだした。H.pyloriおよびIFN-γは、このSox2の発現機構を抑制し、更にSox2阻害はCdx2を誘導することから、H.pylori感染胃粘膜においてはSox2発現抑制が、胃粘膜萎縮の形成と腸上皮化生の進展に重要な影響を及ぼしていることが考えられた。
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