研究概要 |
本研究を施行するに当たって、まずlineage(Lin)negative(-)/CD34-臍帯血の分離法を確立した。臍帯血はインフォームド・コンセントを得た後に採取し比重遠心法により単核球分離を行った。臍帯血単核球をPE標識CD2、CD3、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD56、CD123、CD235a(Lin-PE)およびCD34-PEで標識した後に、抗PE抗体マグネット・ビーズでnegative selectionを2回繰り返した。得られた単核球細胞のペレットに赤血球の混入が観察される場合には(ペレットが赤血球の混入のため赤色に見える)、赤血球が除去されるまで繰り返した。最終的に得られた血球をLin-PEおよびCD34-FITCで標識し、flowcytometry解析によりLin-CD34-細胞の純度を確認した。次にhTERTヒトストローマ細胞とLin-CD34-細胞の共培養系の確立を試みた。まず、共培養に用いるLin-CD34-細胞数の至適量を決定した。4x10^5個のヒトストローマ細胞を25cm^2 flaskに播き、サブコンフルエントになった時点で、無血清培地X-VIVO 10により3回洗浄した。TPO(50ng/ml、終濃度),FL(50ng/ml)およびSCF(10ng/ml)を添加し、あらかじめX-VIVO 10中に調整したLin-CD34-細胞5,000、20,000、100,000、500,000、2000,000個を加えた後に2週間共培養を行っt。同時にTPO(50ng/ml、終濃度),FL(50ng/ml)およびSCF(10ng/ml)のみでヒトストローマ細胞フリーの条件も検討した。後者のヒトストローマ細胞フリーの条件下では全く増殖効果を認めず、むしろ生細胞数が減少した。一方、ヒトストローマ細胞存在下では増殖効果を認めるものの、その程度は極めて軽度であり、Lin-CD34-細胞を5,000、20,000および100,000個で共培養した場合には解析に充分な細胞数が得られなかった。また、Lin-CD34-細胞を2000,000個共培養した場合には、2週間の共培養の途中でflask内のヒトストローマ細胞層が剥離してしまい共培養の継続が不可能となった。そこでLin-CD34-細胞500,000個を2週間共培養した後に血球細胞を回収し、flowcytometry解析およびコロニーアッセイを行った。2週間の共培養後の総細胞数は685±94(x10^3)に過ぎなかったが、156±16(x10^3)のCD34陽性細胞が認められた。また、CFU-Cは共培養前の0.7±0.2(x10^3)から120±35(x10^3)まで著増し、CFU-Mixは共培養前の50±41から6513±3791まで著増した。Lin-CD34-細胞を2週間共培養した後に血球細胞を回収した後に、ヒトストローマ細胞層の下に潜り込んでいる細胞が観察されたため、TPO(50ng/ml、終濃度),FL(50ng/ml)およびSCF(10ng/ml)を添加しさらに2週間の共培養を行った。その結果、総細胞数1491±145(x10^3)、CD34陽性細胞105±21(x10^3)が回収された。また、CFU-Cは203±91(x10^3)とCFU-Mixは4410±3542まで著増した。すなわちLin-CD34-細胞をヒトストローマ細胞と共培養することにより、CD34陽性細胞が誘導できるとともに、未分化コロニー細胞数を効率的に増幅し得ることが明らかとなった。今後、造血幹細胞分画の増幅効果について検討が必要と考えられる。
|