研究概要 |
本研究では、自閉症や注意欠陥多動症候群などの発達障害の神経生物学的理解に重要な脳内病理の解明、客観的要素を備えた疾患特異的障害を検出可能な検査課題の開発を目的に、患児および病態モデル動物を対照にした認知心理学的実験を行った。発達障害患児における疾患特異性の評価については、視覚刺激の提示とボタン押しの選択反応を用いたこども用遂行課題を作成し、その有用性を検討した。パーソナルコンピュータ上に作成したこども向けのゲーム方式の逆転弁別課題、セットシフト課題、n-back課題を、それぞれ発達障害患児および健常児に課して成績データを収集した。患児においては治療による症状の推移に従った追跡調査を現在実施中である。疾患特異的、症状特異的な特徴を明らかにするための統計解析にはより多くの被験者数が必要と考えられた。ラットを用いた病態モデルに関する実験では、脳内セロトニン神経系を傷害させたラットに、上記逆転課題と同等であるオペラント箱を用いたGo/No-go型非対称性弁別およびその逆転課題を課し、それぞれの学習獲得に関わるセロトニン神経の前頭眼窩野や扁桃体における部位特異的役割を明らかにした(Psychopharmacology189(2):249-258,2006)。さらに、セロトニン傷害による脳内の遺伝子発現の変化を検索中である。また、内側前頭前皮質を部位特異的に傷害させたラットに別の上記逆転課題およびn-back課題と同等の課題である、迷路を用いた嗅覚弁別課題における連続逆転課題および遅延交替課題を課し、その役割について検討した。その結果、内側前頭前皮質は逆転課題そのものや連続逆転学習セット形成には関与しないが、連続逆転課題の2回目の逆転学習に対して特異的に関与することが明らかになった.(投稿中)。
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