研究概要 |
心筋では,減弱によるカウントの低下と散乱線による分解能の劣化により,病変を過小評価することが指摘されている。近年,外部線源を用いるTransmission CT (TCT)やX線CTによる減弱補正の開発が行われているが,外部線源の利用は煩雑であるため,十分な臨床応用はされていない。 本研究では,外部線源を用いないでT1-201発生光子の異なった2種類のエネルギー差,ここでは主要エネルギーである71keV(放出割合75%)のHg-201特性X線と167keV(放出割合10%)のガンマ線の減弱差を利用し,さらに71keVへの散乱線補正を組み合わせることで,そのエネルギー差(減弱の差)を拡大させる減弱・散乱線補正法を開発した。平成18年度は,この理論を正常および虚血性心疾患をシミュレーションした心筋ファントムを用い,その理論の妥当性を検証した。さらに,^<201>TICl心筋血流SPECT検査に臨床応用し,従来の減弱・散乱線補正を行わないSPECT画像をリファレンスとして散乱線補正のみ行った場合と吸収・減弱補正を行った場合のSPECT画像を作成後,画質,視覚評価および定量的評価を比較,検討した。 心筋ファントムにおいて,正常心筋モデルでは肝臓放射能の有無にかかわらず下壁のカウントが減弱・散乱線補正により上昇し,心筋全体がより均一な分布になった。心筋梗塞モデルも同様に,梗塞部以外の正常領域は均一になり,かつ梗塞部は低いカウントが保たれていた。臨床例においては,正常例では心筋全体がより均一な分布となった。前壁および下壁に病変を有する疾患で,画質および病変検出能を検討した結果,本法の使用により画質は改善された。病変検出能は補正によって検出能が下がることはなく,診断能においても問題がないと考えられた。 減弱・散乱線補正をすることにより,心筋全体のカウントが均一になり心筋壁・心室腔が明瞭に描出され,特に下壁での減弱・散乱線補正の効果が著明であった。このことから,外部線源を用いない本法は臨床においても有用であると考えられた。
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